主要特性
- 製パン性が優れ、他の品種とブレンドするとさらにおいしいパンができる。
- キタカミコムギより3日早く、ナンブコムギと同熟である。
- 耐倒伏性が強く、赤さび病、縞萎縮病およびうどんこ病にも強いが、穂発芽しやすい。
- 安定多収で、粒は硬質で大きい。
写真右下:ハルイブキ(左)、キタカミコムギ(右)。
種子消毒により寒雪害を防ぎ、高品質、多収化
播種前に種子消毒を行うことにより、寒雪害(雪腐病)と赤かび病の発生を防止でき、多収、良質。
種子消毒の有無が寒雪害(雪腐病)、収量・品質におよぼす効果(青森畑園試)
品質概評(外観品質)は値が小さい方がよい。
播種適期9月下旬~10月上旬、播種量ドリル播8kg/10a、全面全層播10kg/10a
早播は根雪前に過繁茂になり雪腐病の発生が多く、晩播は寒害・雪害の発生が多くなり、いずれも低収、低品質。また、極端な薄播きは出芽苗立ちが不安定で厚播きは過繁茂となり、収量・品質が不安定。
全面全層播栽培における播種量が収量に及ぼす影響(秋田農試)
幼穂形成期、減数分裂期および穂揃期の3時期に、窒素をそれぞれ2~4kg/10a追肥
高蛋白化と多収化を図るためには追肥は必須で、4月中下旬の幼穂形成期と5月上旬の減数分裂期および5月下旬の穂揃期の3時期に窒素成分量でそれぞれ2~4kg/10a施用。なお、圃場の肥沃度に応じて、追肥量は増減する。
幼穂=幼穂形成期、減数=減数分裂期、穂揃=穂揃期、各時期に窒素を4kg/10a施用。
製パン性は小麦粉の蛋白含量と関係が強い
パン用としての小麦粉の蛋白含量は、11%以上が必要。製パン性は小麦粉の蛋白含量と強い相関があり、蛋白含量11%以下ではパンの膨らみが悪く、おいしいパンができない。適正な追肥管理により粉蛋白含量が11%(原粒蛋白含量12%以上)になるよう努める。
窒素追肥試験における粉蛋白含量とパン比容積との関係(東北農研センター)
各追肥時期に窒素を5kg/10a施用。
パン比容積は市販強力粉を100とした比数。
品質低下を防ぐため、成熟期に達したら早めに収穫
成熟期以後に雨濡れにより穂発芽しやすく、外観品質も低下するため、成熟期に達したら雨に当てないように早めに収穫。フォーリングナンバー(糊粘度)は成熟期頃が最も高く、成熟期を過ぎると急激に低下。
収穫時期がフォーリングナンバーに及ぼす影響(秋田農試)
フォーリングナンバーは高いほど品質がよい。
ハルイブキの特性(岩手県)
品種名 | 成熟期 | 収量 (kg/10a) | 耐倒伏性 | 赤さび病 | 穂発芽性 | 外観品質 |
---|---|---|---|---|---|---|
ハルイブキ | 7月8日 | 456 | 強 | 強 | 中 | 中中-中下 |
キタカミコムギ | 7月11日 | 364 | 中 | 中 | やや易 | 中中 |
ナンブコムギ | 7月8日 | 242 | 弱 | やや弱 | 難 | 中中 |
ハルイブキとネバリゴシのブレンドによる製パン性の向上(岩手県)
品種名または ブレンド組み合わせ | ブレンド比率 (%) | 吸水性 (20) | 作業性 (20) | 官能評価 (60) | 総合評価点 (100) |
---|---|---|---|---|---|
ハルイブキ | - | 18.0 | 16.8 | 42.4 | 777.1 |
ネバリゴシ | - | 10.0 | 13.8 | 43.0 | 67.3 |
ハルイブキ+ネバリゴシ | 50+60 | 15.5 | 18.5 | 53.8 | 87.8 |
市販強力粉 | - | 18.0 | 18.8 | 49.9 | 86.6 |
ハルイブキの栽培適地
耐寒雪性がやや強いため、寒冷地である東北・北陸地域の根雪日数110日以下の平坦地に適応する。特に、北東北の岩手、秋田の各県に適応している。栽培上の注意点として、製パン性の向上を図るため適正な追肥管理により高蛋白化を図る。また、穂発芽しやすいので、成熟期に達したら雨に当てないように早めに収穫する