果樹茶業研究部門

果樹の災害対策集

青森県

1.台風被害の様相

青森気象台開設以来の最大瞬間風速53.9m/sを記録した19号台風は、各地で被害が多く、落果量は34万tに及ぶ予想収穫量の70%であり、その他に樹上での損傷が4万3千tであった。これまでの台風被害は落果、樹上損傷がほとんどであるが、今回の台風は樹体の被害も多く、倒伏、折損などの被害は56万本もあり、その半数は断根により、回復不能の被害を受けた。特に、普通台の被害に比べてわい性台樹の被害が多かった。

また、施設面では防風網の被害が極めて多く、施設総延長の12.6%に及んだ。最も多かったのは半倒伏が被害の半分以上で、折損も30%程度みられた。さらに、わい性台樹の支柱被害は、年数が7~8年経過した木製の支柱で地際の腐朽したもの、鋼管製でも地際の錆びたものに折損が多く、23万本に及んだ。

 

2.被害後の技術対策

従来の台風に対する技術対策は、以下のとおりである。

  • 腐らん病被害樹、紋羽病り病樹および幹、主枝に空洞のあるものは支柱などで補強して倒伏折損を防ぐ。
  • 結果枝の支柱は外して、風の抵抗を弱める。
  • 防風施設を点検する。
  • 収穫可能なものは早めに収穫する。
  • 落下した果実の障害を防ぐため樹冠下に敷き藁をするとともに、傾斜地では等高線沿いに藁などで垣をつくるなどで対処して、落果の処理は傷害程度でよりわけてそれぞれの用途に応じて処分する。傷の大きい果実は加工用に向ける。

しかし、今回の台風は落果の多さもさることながら、樹体の被害や施設の被害が大きかったので、来襲後直ちに次の対策を講じた。

  • 落下した果実は、直ちに拾い集め、品種、傷の程度別に選果する。傷の大きいものは即時加工に向ける。
  • 晩生種で傷のないものや、傷の軽いものは加工用として冷蔵する。
  • 中生種で傷のないものや、傷の軽いものはきれいな水で泥を洗い落とし、生果で販売する。ただし、販売する場合は落果品であることを明示する。
  • 倒伏樹については、回復可能なものはできるだけ早く起こし、丈夫な支柱で支える。直ちに起こせない場合は、根に水をかけるなどして乾燥を防止する。
  • 枝が裂けた場合は、接着可能な枝は縄で固く縛るか、かすがいなどで接着して傷口に塗布剤を塗る。切り落とした場合は塗布剤で傷を保護する。
  • 腐らん病対策として、樹体損傷および落果による、つる抜け・つる折れが多いことから、感染防止のためチオファネートメチル剤(商品名、トップジンM水和剤)の早めの特別散布を実施する。

その他、剪定・施肥などの考え方は以下のとおりである。

  • 根が切れたことによる樹勢低下が懸念されるので、強剪定を避け間引き主体とする。
  • 枝の欠損のある場合は、徒長枝の利用で早く空間を埋める。
  • 施肥は消雪後早めに行う。樹勢を見て追肥する。また、大枝欠損樹は減肥する。
  • 樹勢の弱いものは尿素の葉面散布を行う。堆肥マルチ、敷き藁を積極的に行う。
  • 着果量は、樹勢を見ながらその量を加減する。

これらの被害後の技術対策を、随時、情報・小冊子などで関係機関に伝達するとともに、指導者研修および現地研修で啓蒙を図った。

3.樹勢の回復状況

生産力の早期回復のため、被害樹の早期立て直しを図るとともに、被害の程度に応じて、補植あるいは改植を実施する。この際2~3年生の肥培苗を栽植する。また、被害樹については、堆肥マルチ、敷き藁などで乾燥を防ぐとともに、樹勢の弱いものは全摘果し、しかも本年(1992年)の摘果作業は被害樹から始めるよう指導を徹底した。

被害樹の樹勢については、台木、品種、樹齢、土壌条件および被害後の立て直しまでの日数にもより異なると思われるが、現地においても1992年6月になって衰弱気味の樹が目につくようになった。

わい性台樹を対象とした1992年6月中旬の調査事例では、完全倒伏したものでも倒伏しない樹と変わらないものもあるが樹勢がやや弱めのものが多く、45度くらい傾いたものは、普通の樹勢のものが多いが、若干弱めのものもみられる。

本年(1992年)は、この後も被害樹の樹勢の観察を続け、葉の色が薄くなったり、新梢の伸長が劣るものは、摘果の見直しや葉面散布などを行い樹勢回復に努める。