果樹茶業研究部門

果樹の災害対策集

広島県

1.台風被害の様相

被害の大部分は塩分を含む強風による落葉・落果・枝折れ・枯死などで、雨台風でなかったことが被害を助長した。被害を受けた園地は、南もしくは南西の海に面した高品質果実が生産される傾斜地の園であった。被害樹は、台風通過の1週間後にはまだ緑色が残っていたが、1か月後には落葉するか葉が枯れて、緑色を呈するものはほとんどなく、茶褐色一色で日を追うごとに被害程度は進んだ。落葉した樹は1~2年枝が枯死し、被害程度の大きいものでは側枝や亜主枝の一部まで枯死した。しかし、緑果が付いている枝は生きていた。10月中旬頃から落葉のひどい樹ほど秋芽が多く発生し、特にハッサク、ネーブルなどで多かった。果実は落葉がひどいほど着色せずに緑色が残った。

地下部の状況は、成木でも落葉率60~70%以上の樹は、12月中旬には直径1cm以下の根や細根が腐って、皮と木部とが分離してアルコール臭を発していた。

幼木の被害は、成木よりも大きく、潮風害を受けた高畝栽培や大苗育苗圃は 100%落葉枯死し、幹や根もほとんど枯死しているものが多かった。高潮によって海水が浸入した園の樹はほとんど枯死した。

2.被害後の技術対策

  1) 被害後から発芽まで

  • 被害樹の摘果
    落葉率50%以上の樹は、秋芽の発生が予想されるため果実を残すが、着色開始期以降に全摘果する。ただし、落葉率30~50%未満の樹は、葉果比を基準に従って補正する。
  • 樹体の日焼け防止
    落葉率60%以下の回復可能樹では、石灰乳の塗布または寒冷紗や藁掛けなどで日覆いをする。
  • 品質向上対策
    腐敗防止剤の2回散布の徹底。着色剤の散布は30%以上落葉した園では硫黄剤散布を中止する。
  • 秋肥の施用
    70%以上の落葉園は中止、50~70%は基準の1/3、30~50%は基準の1/2、30%以下は基準どおりに実施する。
  • 冬季の管理
    被害園(樹)のマシン油乳剤散布は中止する。春のマシン油は落葉率30%以下の園のみで散布する。防寒対策としては、寒冷紗などで樹冠を被覆するか、藁・紙などで太枝を巻く。冬季の土壌乾燥は低温とともに落葉を助長するので、潅水・敷き草などを行う。落葉防止のため12月中旬までに窒素系の葉面散布剤を散布する。

  2) 発芽開始以後

  • 整枝剪定
    落葉程度に応じて、中止または軽い間引き剪定を行う。太い枯れ枝の切り返しは新梢の緑化後に行い、切り口は接ぎ蝋、アルミ箔などで保護する。
  • 葉面散布
    落葉によって根傷みを起こし、根からの養分吸収力が衰えているため、発芽期から窒素を主体とした葉面散布剤を7~8日間隔で散布して樹勢回復を図る。
  • 病害虫防除
    かいよう病、アブラムシ、ミカンハモグリガなどは葉数確保のため、防除を徹底する。
  • 施肥
    発根・回復が遅れるので被害程度(落葉・根の生存状況)を観察して、施肥量、施肥時期を決める。

3.樹勢の回復状況

  • 被害樹の状況
    10~12月から5月にかけての落葉は、総括的に10~20%進み、落葉程度別には被害程度が大きいほど落葉も多かった。しかし、70%以上の落葉激甚の樹では10%以下にとどまった。品種別ではアマナツ、極早生温州などの落葉がやや多く、高接ぎ樹も多かった。
    また、4~5月時点の落葉程度が70%以上を越えると、1~2年生枝の枯れ込みは急増し、落葉80%前後では約1/2が枯れ込んだ。品種別ではレモン、アマナツ、普通温州の枝枯れが多く、ハッサク、イヨカンでは少なかった。さらに、1~2年生枝の枯れ込みと根腐れとの間にはほぼ直線的な関係が見られ、枝枯れ35%前後で根腐れ20%程度、50%前後では35%程度、60%以上では60%以上であった。品種別では、アマナツ、極早生温州の高接ぎ樹がひどく、ハッサク、イヨカン、レモンは比較的軽い。特に被害程度の大きい樹は新梢が発生しても 、台木の主根(地下10cm位)が枯死している場合が多い。
    落葉部位の新梢は短く、小葉化して緑化も遅れており、夏枝が発生しない場合は新根が発生していないため、夏の高温乾燥で枯死する可能性が考えられる。
  • 改植を必要とする樹体の判断基準
    • 10~12月の落葉程度:70%以上
    • 4~5月の落葉程度:85%以上
    • 1~2月の枝の枯れ込み程度:50%以上
    • 細根の枯死程度:35%以上