果樹茶業研究部門

果樹の災害対策集

熊本県

1.台風被害の様相

台風被害は、潮風害による落葉・傷葉、強風害による幹の折損・樹の倒伏・枝折れ・ 落葉・傷葉・根群の枯死と減少である。地形的には、海岸より1km程度の範囲の南、南西面のミカン園や、山を越え背後の山で風が集中するミカン園に被害が大きかった。

園内では最前列の樹に被害が大きく、2列目以降は軽かった。また、間伐が徹底した園、着果過多樹、高接ぎ園の樹齢が若い樹、防風樹のない園などの被害が大きかった。系統的には、極早生・早生温州で被害が軽く、普通温州、特に‘金峯温州’のように枝伸びの良い系統で被害が大きかった。このように被害を受けて落葉した樹には、秋枝が発生したが充実しなかった。しかし、本年は暖冬であったため、寒害による枯死はほとんどみられなかった。

果実被害では、強風・潮風による落果・傷害果の発生がみられた。果実は落葉、土壌乾燥により肥大が抑制され、果皮が硬く、果皮色(紅色)が薄かった。果実品質は、糖・酸とも高かった。また、貯蔵中の腐敗果の発生が多かった。

2.被害後の技術対策

   1) 事前対策

  • (1) 収穫期に達している果実は、直ちに収穫する。
  • (2) ハウス、果樹棚などの施設は、修理・補強する。
  • (3) 強風により主枝、亜主枝などの欠損が予想されるので大枝どうしの結束を行う。
  • (4) 幼樹、根の浅い樹は、樹の倒伏、枝折れ防止のため支柱を立て枝を固定する。
  • (5) 高接ぎ更新樹では、竹などを添えて接ぎ木部を固定し枝折れを防止する。
  • (6) 潮風害を受ける恐れのある場所では、散水用の水を確保する。

   2) 事後対策

  • (1) 倒伏した樹は、早めに引き起こし、支柱を添え、土寄せ、敷き藁を行う。
  • (2) 枝折れ、枝裂け樹は、傷口を切り直し、傷口の保護に努める。また、軽い枝裂けは極力針金などで結束し、樹体を保護する。
  • (3) 落葉のひどい樹は、主幹、主枝部の日焼け防止(石灰乳の塗布、稲藁巻き)を行う。
  • (4) 潮風被害園では、台風通過直後に塩分除去のため樹上散水を行う(10t以上/10a)。
  • (5) 根の活力を促すため、潅水を行う。
  • (6) 被害が甚(落葉率70%以上)の樹は、果実を落として秋枝の発生を促す。
  • (7) 被害が軽い樹は、着果負担を軽減する。
  • (8) 樹勢回復を促すため、葉面散布と追肥を行う。
  • (9) 病害防除を徹底する。

   3) その後の対策

  • (1) 10月中旬時点で落葉がひどく、秋枝が発生している樹は、新梢の緑化に努める。
  • (2) 落葉が中程度の樹で果実収穫が見込まれ発芽しているものは、新梢を保護する。
  • (3) 落葉が軽い樹は、極力芽を出さないようにする。
  • (4) 被害程度に応じた区分採収、選別貯蔵を行う。
  • (5) 樹体保護のため、防寒対策を徹底する。

3.樹勢の回復状況

落葉が激しい樹ほど、細根の枯死、枝の枯れ込みが激しく、この傾向は着果過多樹で顕著であり、樹勢の回復見込みのない樹が多かった。しかし、落葉が激しい樹であっても着果が少ない樹は、前年枝以下からの秋枝発生が多く、枝の枯れ込みはみられるものの樹の回復が見込まれるものが多い。

落葉程度が軽くなるに従って、秋枝の発生は少なくなり、枝の枯れ込みも少なくなっている。翌年度の着花・春枝発生については、落葉が多く秋枝が発生した樹では、ほとんど着花がなく、前年枝・秋枝から春枝が発生している。落葉が少ない樹は、着花が多く春枝の発生は少ない傾向にある。