果樹茶業研究部門

果樹の災害対策集

新潟県

1.台風被害の様相

9月28日午前2時頃(南風)から7時頃(西風)にかけて、風速15~20m/s(最大瞬間風速、佐渡:48.5m/s、西蒲原郡巻町:56.7m/s)の強風にさらされた。フェーン現象により気温30℃、湿度50%前後になったことに加え、佐渡や西蒲原郡巻町など海岸に近い地域では潮風にさらされた。被害の様相は強風に伴う枝折れおよび飛砂や枝ずれによる落果、果実やへた片への直接的損傷がみられたが、主体は潮風による甚だしい葉の脱水褐変、落葉およびこれに伴う果実や樹体への生理的影響によるものであった。9月28日の被災当日を含めてその後3日間降雨がなかったことが、症状の進行に拍車をかけた。カキの被害面積は 622haに及んだ。

台風襲来時のカキ果実の成熟度は‘刀根早生’で果頂部 4.0、‘平核無’で 2.0前後であったが、落葉に伴い直後からの肥大停滞、異常な着色進展の傾向が現れた。また、糖度の低下、樹上での軟化および脱渋後の日持ち性の低下など品質低下を引き起こし、品種や落葉程度によってその様相は異なった。‘刀根早生’に比較して成熟の遅い‘平核無’では被害がはるかに大きかった。落葉程度については、落葉率50%前後まではさほどでないが、それ以上に高くなると被害が著しく増大する傾向がみられた。

 

2.被害後の技術対策

  • 当年度(1991年)の対策
    • 次年度の花芽発育や生育を確保するため、被害の程度に応じて除果(摘果)する。その目安として、80%以上落葉した結果枝の果実と果梗(軸)の損傷果、枝ずれ、葉ずれ、打傷、飛砂などによる著しい損傷果を対象とした。
    • 80%以上落葉している部位の果実は、出荷の対象としない。果実の外観、へた片の傷害程度は、県青果物出荷規格基準に基づいて取り扱う。被害にあった果実は、脱渋後の軟化および糖度など品質低下が懸念されるので、収穫基準を遵守し、適熟果の収穫に努める。‘刀根早生’については、着色基準に達したものから速やかに収穫する。台風被害に伴う脱渋法の変更は特にしない。
    • 樹全体の落葉程度に応じて礼肥の施用量を減らすが、施用時期は早めにする。基肥は例年並みとする。
    • 秋冬期の粗せん定は弱めにし、枝数を多く確保する。優良な充実した枝を残すように心がける。大きな切口には保護剤を塗布する。
  • 次年度(1992年)の対策
    • 仕上げ剪定は、催芽状況を確認のうえ充実した結果母枝の確保に努める。
    • 摘蕾程度は、着蕾状況に応じて加減する。花芽の量、質の低下が予想されるので、弱小不良花蕾を優先して摘蕾する。
    • 摘果の適正化によって、収量確保、果実肥大の促進を図る。
    • 樹勢が弱っている場合は、誘引や捻枝などにより葉数を確保し樹勢回復を図る。二次伸長がみられる場合は、段階的に整理する。
    • 窒素の追肥は、原則として実施しない。梅雨明け直前で葉色が極端に薄く、着果量が普通の場合、窒素肥料1kg/10a(成分で)程度を施用する。

3.樹勢の回復状況

  • 着らい状況
    • 前年度(1991年)の着果量が多かったこともあって、全般に着蕾が少なかったが、落葉被害が多かった園では特に着果量が少ない。1母枝内での着蕾状態にも、むらがみられた。
    • 奇形果の発生は少なかったものの、弱小花蕾が目立った。花蕾の大きさは、落葉が多い樹ほど、また、落葉後摘果しない樹ほど小さい傾向がみられた。
  • 新梢の生育
    • 発芽および初期生育は、落葉の多い場合にやや遅い傾向であり、新梢伸長停止期が早かった。また、一部に結果母枝の枯死および枝内部変色がみられた。
    • 被害の大きい園では、葉色が薄く(6月末時点)かつ小型で、全般に樹勢が低下しているようにみえた。5月の乾燥並びに低温の影響もあるが、貯蔵養分不足が主要因と考えられる。1992年7月上旬時点での葉色は、回復傾向にある。