果樹茶業研究部門

果樹の災害対策集

1.防風垣・防風林などの防風施設を設置する際の基準を知りたい

リンゴ産業に過去最大の被害を与えた今回の台風19号(1991年)は、50m/sを超える最大瞬間風速が観測されている。このような台風の再現期間はおよそ 100年に一度とされているが、これから 100年間はこないということではなく、台風の襲来確率として単に 100年に1度といったことを意味している。このようなことから、防風施設の必要性は明らかであるが、どの程度の強風を防ぐための防風施設が必要かが重要な問題となる。現在の防風施設の設計基準では、基準風速は再現期間10年の最大瞬間風速を、また、基準風向は日最大風速時の最多風向を用いることにしている。これを今回の青森気象台の例に当てはめると20年確率風速は34m/s、10年確率風速は31m/sであるので、少なくとも最大瞬間風速31m/sが設計基準となる。基準風向は、一般に南から南西方向が主体となる。

1) 基準風速

最大瞬間風速の観測値がない場合は、日最大風速(通常10分間平均風速の最大値)の再現期間から10年確率風速を求め、その値の1.5~1.9倍を最大瞬間風速と考える。この係数は場所により異なるので、現地と付近の気象官署との最大風速の相関関係から求める必要がある。なお、観測資料がない場合には、地形因子の解析から再現期間年最大風速を推定する手法がある。これは20万分の1あるいは5万分の1の地図と地形因子(陸度、海岸度、開放度、最低点標高差、地域区分、流通方向など)から、各地形因子のカテゴリーの数量の合計を求め、風速の推定値を算出する。

2) 設計風速・風向

防風施設の設計に当たっては、基準風速に地形係数(現地の基準風速に対する各現場の風速の比)と経験定数(期間係数または季節係数と呼び、年最大風速に対する防風施設の設定対象期間の最大風速の比)を掛け、更に安全係数をかけて施設の設計に安全性をもたせる。しかし、現地の風向に対し直角に施設を設定できればよいが、地形、道路、水路、耕作の便、経費、既存林などの条件を考える必要がある。