果樹茶業研究部門

果樹の災害対策集

5.被害樹の樹勢回復の土壌管理及び施肥はどのようにしたらよいのか

台風のあった9月下旬(1991年)は、リンゴ樹では根が伸長している時期である。台風被害後すぐに樹を立て直した場合には回復が早く、翌春からの養分吸収が可能となる。また、9月から10月にかけてのリンゴの根は貯蔵養分を蓄積するが、倒伏樹では貯蔵養分不足のため、樹勢が衰弱し、さらに花芽へも影響することが危惧される。

1) 倒伏樹立て直し直後の施肥

台風によって到伏した樹は断根、枝折れ、落葉などの被害を受け、樹勢の低下が心配される。しかし、倒伏した樹を立て直すときに根圏へ施肥を行うことは、むしろ発根を抑制する危険性がある。施肥を行うとしても、翌春の慣行施肥の時期に、例年より20~30%施肥量を減らして実施するのがよい。堆肥については、春先に従来どおり施しても良い。その場合は、堆肥の窒素含有量によって施肥量を減らす必要がある。また、倒伏はないが落葉した樹についても、葉による蒸散流が低下しているので、年内に施肥を行っても肥料はほとんど吸収されない。特に、リンゴ産地は積雪地が多いので、冬期間の溶脱による損失がむしろ問題である。

2) 被害樹に対する翌春の施肥

被害樹の樹勢回復のための翌年の土壌・肥培管理として、土壌の乾燥防止とともに地力の増強対策を行い、さらに芽出し以降の樹勢が劣る場合(発芽、展葉、開花が遅れた樹、葉および花が小さく葉色が淡い樹、新梢が短い樹など)には、開花直前から6月までの時期に尿素の葉面散布を考慮する。散布濃度は 0.2%程度とする。尿素はほぼ1日で葉に吸収され、衰弱樹の新梢伸長、根の発育促進などに効果があるとされている。土壌の乾燥防止のためには稲藁または堆肥マルチを積極的に行う。