果樹茶業研究部門

果樹の災害対策集

7.倒伏樹の立て直しと植え替えの判断ならびにその際の留意点を教えてほしい

倒伏樹の立て直しと植え替えの判断は、明確な基準がなく困難である。今回(1991年)の台風では南風のため、北を枕に倒れた樹がほとんどである。その場合、北側半分の根系は南側に比べ被害が少ないと考えられる。しかし、1991年の台風による根の被害状況を調査した結果では、わい性台の倒伏樹の場合、倒伏せずに若干傾いた樹では風上の根は30%程度が断根し、反対側も10%弱の断根がみられている。また、45度程度傾いた樹および横倒しになった樹は、風上では30%、反対側でも20%程度の折れや断根がみられている。断根の程度は、台木、樹齢、土壌の種類、土の硬さなどで異なる。

完全に倒伏した樹齢20~30年の成木の立て直しは難しいと判断されるが、20年生以下の場合には立て直しでかなり回復させることができる。ただし、その場合も倒伏後の立て直しまでの時間が問題となる。10月中は、まだ樹の発根力があり、9月末の台風被害直後に立て直した場合には、年内にかなりの発根があるとされ、11月以後に立て直した 樹での発根は、翌春までみられない例が多かった。

わい性台リンゴ樹の経済寿命は、栽培条件によって同じではないが、20年前後と考えられる。経済寿命があと5、6年と考えられる老木が倒れた場合には、植え替えを考える。その場合、2、3年生苗が手に入ればそれを利用する。また、一旦、立て直したあとに周囲に苗を植えて、しだいに更新するのもよい。なお、樹列の一部だけを改植するときには、以前と異なった品種を植えると、作業に種々な困難が生じる。わい性台リンゴ園では、同じ列には同じ品種を植えることが省力化の原則である。別の品種を植えるときには、列ごとの更新を考える。

普通台リンゴ樹では、20年生より若い場合には、落果しなかった果実の成熟を待ち、収穫が終ってから立て直す。しかし、倒伏した樹の多くは、紋羽病(白、紫)や高接ぎ病におかされているものが多く、これらは更新の対象になる。また、老木樹が倒れた場合も更新することが多い。このような場合には、改植障害に備え、土壌消毒を行ったうえで、堆肥を多めに施してから若木を植え付ける。