果樹茶業研究部門

果樹の災害対策集

8.倒伏樹の抜根・新植・改植に当たり注意すべきこと、またその場合の土壌処理について教えてほしい

改植の際には、忌地現象や紋羽病(白、紫)の発生が懸念されるので、抜根した後は耕起し、根を拾って、その後クロールピクリンなどで土壌消毒し、可能であれば天地返し、緑肥(スダックス、エンバクなど)を植える。

有機物の豊富な土壌は、土壌消毒により可給態窒素が増加し、翌年の新梢伸長が盛んになるので堆肥の施用は控えたほうが賢明である。逆に、天地返しで下層のやせた土が表面に出てくると樹の生育が極端に劣ることがあるので、その場合には堆肥を投入する。

わい性台木を用いた改植の場合は、マルバカイドウ台による改植よりも著しい生育抑制障害(忌地)が予想される。改植障害の原因は、土壌養分の不均衡、土壌微生物相の変化、作物遺体中の生育阻害物質の存在などが考えられる。対策としては、プラウ耕などで深耕しながら、前作のリンゴ根をていねいに拾い上げ、夏期にクロールピクリンによる土壌消毒を行う。可能であれば1か月間マルチによりガスの揮散を防ぎ、その後ロータリー耕でガスを抜いて、堆厩肥や土壌改良資材の施用を行う。

わい性台木の苗木の植え付け(改植)に当たり、注意すべきことを列記すると、

1) 定植時期
暖地では早春に新根発生が期待できる秋植え、寒害の心配のある寒冷地では春植えとする。

2) 栽植距離
従来の栽植距離は狭すぎたという問題が多いので、たとえば、M.26台のふじを新植する場合、従来の4×2mでは狭すぎるので、土壌条件にもよるが、5×3mなど、かなり広めの栽植距離が必要である。

3) 台木の選択
M26台を使用する場合は、穂木品種によって樹の大きさが異なる。‘さんさ’、‘つがる’、‘ジョナゴールド’、‘王林’などの‘ゴールデンデリシャス’や‘紅玉’の後代品種では衰弱しやすい。園全体として均一な栽培をするには、品種によって台木を変える必要がある。

4) 台木の地上高
台木の地上部が長いほど生育が抑制されるので、密植にする場合と、やや粗植にする場合とで地上部に出す台木の長さを変える必要がある。

以前は地上部20cmとされていたが、この長さでは一部の品種に盛果期以降に衰弱樹が発生する恐れがある。樹の沈降が落ち着いた後10~15cm程度になるようにやや高めに定植する。樹の大きさを揃えるためには、台木地上高を一定にする。

5) 中間台利用
紋羽病などの土壌病害が発生している園では、わい性台自根を用いるよりも、下に環境適応性のより強いマルバカイドウ台のついたM.9中間台方式を採用するのもよい。

最近、果樹試験場リンゴ支場でJM台木が育成された。JM台木は接ぎ木部の接合が非常に強く、従来のM.9,26台の様な接ぎ木部からの折損はほとんど考えられない。JM台は挿し木繁殖も可能など、優れた特性が多いので、改植の時は、採用したいものである。