果樹茶業研究部門

果樹の災害対策集

9.不時開花(返り咲き)した樹は、今後どのように取り扱うのがよいか

1) 倒伏樹の場合

開花によって貯蔵養分が消耗していることが考えられる。その場合の最大の問題は、耐寒性(耐凍性)が低下することである。特に、衰弱した樹で寒風による枝の枯れ込みが発生する恐れがある。また、倒伏樹では、根が切断されたことによって、冬期間における吸水が制限され、そのため耐寒性がむしろ強化されることが考えられる。芽の水分含有量の低下は、貯蔵養分とともに寒風害に対する耐性に大きく関連している。なお、不時開花が問題になった地域は、ほとんど潮風害を伴っており、枝の枯れ込みが発生することが予想される。寒風害では新梢の髄の褐変を伴うが、潮風害ではむしろ芽の周辺の枯れ込みが発生する。これらのことによって、潮風害と寒風害をある程度区分できる。

 

2) 不時開花した樹の場合

試験成績が少なく明確な判断はできないが、30%以下の不時開花の場合には、若干、耐寒性が低下する恐れはあるものの、次年度はほぼ正常な生育を行うものと考えられる。しかし、断根、落葉などが加わり貯蔵養分の蓄積ができないため、翌年の生理落果が発生しやすくなる。そのため、開花前の 0.2%尿素の葉面散布や、人工授粉などが必要になると思われる。また、その場合も果実の初期肥大が劣ることなどが予想される。結実や果実の初期肥大は、前年度の貯蔵養分の影響が大きいからである。

50%以上不時開花した樹については、耐寒性も一層低下しているものと予想されるので防寒に注意することが肝要である。剪定は不時開花の程度に対応して、多い樹ほど弱めにする。なお、落葉の甚だしい樹ほど不時開花が多く、このような樹では礼肥を施してもあまり吸収されず、たとえ吸収されたとしても耐寒性を低下させる一因となりかねないので、翌年まで施肥を遅らせた方が良い。