果樹茶業研究部門

果樹の災害対策集

10.被害樹で翌年の収量を確保するための結実調節(摘果)において注意すべきことは何か

台風による断根と落葉が著しい樹体では、樹体内の貯蔵養分が例年よりもかなり少ないとみられ、幼果の発育の遅れるものが多くなるとみられる。

花芽の発育不全により受粉および受精が十分に行われずに、不受精花が多く発生したり、受精しても奇形果になったりする場合が予想される。また、中心果が少なくなったり、果実の肥大が劣る原因ともなる。このため、被害翌年は摘果が遅れると例年より果実肥大に大きい影響の出ることが懸念されるので、摘果剤なども利用しながら早期に摘果を行う必要がある。着果量は、剪定時に充実した花芽を残し、さらに被害程度と春の生育状況を勘案しながら樹勢の強弱や葉数に応じて判断することが求められる。

樹勢の弱い被害樹については、健全樹に比べて葉が小さく少なくなり、葉色が薄い、また、新梢の伸びが短いなどから樹勢を判断し、全部摘果するようにする。樹勢の判断が難しい樹では、健全な短果枝のみを対象に、早期に、強めに摘果する。さらに、樹の発育状況を観察しながら、樹勢に応じた手直し摘果により着果量を調整することが肝要であろう。樹勢が弱くなったものは全摘果することも樹勢回復のためには必要になる。樹勢によっては葉面散布などによる樹勢の回復に努めることも大切である。果実発育の劣る樹では、その肥大の良否を判断し、手直し摘果による着果量の調節をすることも重要である。なお、リンゴ樹では着果量の不足による枝の伸びすぎが問題になることもある。