果樹茶業研究部門

果樹の災害対策集

16.風害の防止軽減法の留意点ならびに今後予想される気象災害とそれに対する基本的な方策を示してほしい

台風に対する基本的方策は、風を受けにくい立地条件を選ぶことである。東北地方では、その立地条件が南風や西風を受けにくい地形となり、山の東斜面に相当する。しかし、このような園地は一方で果実品質に不適地であることが多い。なお、地形的には気流が収束するような場所を避けることが妥当である。

人為的に微気象条件を変える方法としては、防風林の育成、防風ネットの設置などがあるが、これらも年数や設備コストのかかる欠点がある。新たな開園の場合は自然林を生かす工夫が必要である。

樹の仕立て方では、強風に弱いニホンナシなどでは棚仕立てという日本特有の技術を確立したが、リンゴでもこれに類した技術開発が考えられる。主幹形は開心形に比較して強風に弱いが、それを強固なトレリス仕立てで補っている。一本棒支柱についても材質によって強度が異なるので、適度な肉厚のものを選ぶ。

直前対策としては、大きな被害が予想される場合、成熟期に入っている品種あるいは成熟期以前であっても貯蔵によって追熟が可能な品種は収穫してしまうこと、園地を見回って支柱の補強や施設の点検・補修を行うことなどがある。

リンゴ栽培で大きな気象災害は、雪害、凍寒害、寒風害、霜害、滞水害などがある。自然災害は回避しにくいものであるが、技術の駆使によって被害程度を最小限に止めることは可能である。安定生産を図るためには、基本的な防災対策を不断から心がけていただきたい。

災害の防止法について、その概要を以下に列記する。

 

1) 雪 害:枝の結束、枝吊りと支柱立て、枝の掘り起こし、耐雪型の枝作り、融雪剤散布、根元の雪踏み、(ネズミ・ウサギの食害防止)
2) 霜 害:燃焼資材などの利用、防霜ファンの設置
3) 風 害:防風林や防風ネットの整備、支柱の強化と結束、トレリス式仕立て、低樹高化、台風直前の収穫、早中晩生品種の分散
4) 凍 害:凍害の積極的な防止策はない。樹勢強化、幼木では根元への防寒(こも巻き)
5) 寒風害:防風林や防風ネットの整備