果樹茶業研究部門

果樹の災害対策集

1.現在のハウスの強度・構造などの問題点について知りたい

カンキツを始めとする果樹の施設栽培の特徴として、既存園の施設化が多く、傾斜地に立地して不整形をなすことが多いこと、樹高が高いため野菜の施設と比べて棟高が高いことなどがあげられる。そこで、各部材にかかる外力や荷重に対して強度の劣る資材・構造で建設されていることが多く、強風や積雪などの要因により被害が発生しやすい。

パイプハウスの主な形態には、片屋根型、ア-チ型、波状型がある。ア-チ型では、耐雪性向上のため「ほろパイプ」の材質を変えたり、支柱を多くする必要がある。波状型ハウスは強風や積雪の心配が少ない地域で使用され、傾斜地、不整形地に適している。

次に、ハウスに関係する風の力学的な問題について述べる。物体にかかる風圧力は風速の二乗に比例するので、台風時などに強い風が吹くと速度圧(kg/m2) は著しく増大して、ハウスなどの施設は倒壊や破損の危険にさらされる。

風 速 (m/s) 10 20 30 40 50
速度圧(kg/m2) 6.3 25 56 100 156

ハウスにかかる風圧力は、風上壁面、風上屋根面、風下壁面および風下屋根面にそれぞれかかる風圧力の和である。面によって風力係数が著しく異なり、例えば風下側の屋根面では負圧となって浮き上がる力となり、各部材にかかる風荷重の不均衡に耐えられない部分から破損あるいは倒壊する。

ハウスなどの施設における構造上の問題点として、全体的に資材強度が弱いこと、強度のバランスに欠けること、構造や施工に不備のある点があること、各部材の連結・補修が不十分であることなどが指摘されている。

耐風性を強化する方法としては、荷重や外力による変形を少なくするために控え柱が有効な手段である。さらに、施設周辺に防風施設(例えば防風垣)を設置し、直接施設への風当たりを防止するとともにフィルムの取付けや押さえを完全にし、施設周辺から板や棒など飛来することのないようにすることが大切である。建設に当たっては、強度のそろった品質の良い規格品のパイプや部材を使用し、地中への差し込みを完全にして、土中の基礎部をしっかり作り、接合部も固定する。フィルムの展張もきっちりと行う。基本的には、安全性と経済性のバランスを十分考えて耐用年数に応じた必要最小限の耐風・耐雪強度をもたせる。

設置後の維持管理として、パイプの地際部は腐食が進行しやすく、これによる強度低下が著しいので防錆、防腐を行うこと、部材のゆるみやフィルムのたるみ・破れなどの点検を平素から実施しておく必要がある。

なお、風速30m/sを超すような強風下では、ハウスの骨材破損を防ぐため、展張されているフィルムを人為的に破くことが必要な場合もある。