果樹茶業研究部門

果樹の災害対策集

2.防風垣の効果についての具体的資料および林木の耐潮性について知りたい

1) 防風垣の効果についての具体的資料は、以下のとおりである。

  • 西場静雄ら(1966):柑きつ園の防風林(垣)に関する研究-造成とその効果について-,三重県農試研報,1, 38-44
  • 星野正和ら(1962):破風垣の果樹に対する効果について,福岡農試園芸分場研報,1, 27-32
  • 高橋国昭(1983):島根県におけるブドウを中心とした果樹の風害と防止法,日本農業気象学会農業気象災害研究部会研究会講要「風害および防風施設」, 2, 22-27

2) 林木の耐潮性については、以下のようなことが知られている。

防風樹に限定せず林木間の耐潮性の違いを比較した事例として、以下のような報告がある(金内、1964)。

  • 耐潮性が著しく強いもの:マサキ、ボウシュウマサキ、トベラ、マルバグミ、ヒサカキ、ハマヒサカキ、シャリンバイ、マルバシャリンバイ、ギョリュウ、アキグミ、ナワシログミ、ソテツ、ダンチク、ネザサ、メダケ
  • 耐潮性が強いもの:クロマツ、カイヅカイブキ、ツゲ、ネズミモチ、オオシマザクラ、オオバイボタ、イチョウ、ヒメユズリハ、ヤブニッケイ、ツバキ、タブ、ウバメガシ、オオバヤシャブシ
  • 耐潮性のやや強いもの:イヌマキ、ヒマラヤスギ、ヤツデ、アオキ、カクレミノ、サンゴジュ、ギンバアカシヤ、イボタノキ、スズカケノキ、クス、スダジイ
  • 耐潮性の弱いもの:イタリアポプラ、ケヤキ、シダレヤナギ、ソメイヨシノ、トウカエデ、モミジバフウ、ハンノキ
  • 耐潮性の極めて弱いもの:カツラ、チョウセンレンギョウ、ニシキギ

また、林木別にみた潮害の様相は、以下のとおりである。

(1) ヒノキ
通常のヒノキでは、経験的には葉量の半分を失うと枯死する危険が非常に高くなり、2/3以上で枯死個体が続出すると思われる。生け垣として刈り込まれているヒノキでは、片側全部が褐変したような個体は枯死する可能性が高いと考えられる。また、生理的に異常となった個体では、落葉で枯れなくとも二次性穿孔性害虫マスダクロホシタマムシの加害で枯れる可能性がある。本害虫は九州北部に多いが、密度の高低(すなわち被害可能性の高低)は明確でない。
一般にヒノキは萌芽しにくいので、枯れないまでも防風林としての機能低下は避けられない。枯れ葉は冬の季節風でかなり落ちるので、防風機能の低下は被害当年の冬から生じる。
(2) スギ
スギはかなりの枝打ちにも耐えるので、ヒノキよりは枯れにくいと思われる。しかし、立地条件にもよるが生け垣では刈り込まれていることもあり、葉量の半分も失うと枯れる危険性がある。萌芽は良好なので冬に枯れなければ、翌年以降は徐々に防風機能を回復すると予想される。ただ、木全体が枯れなくとも、部分的に枯れた葉が冬の季節風で落葉すれば、冬期の防風機能の低下は避けられない。
(3) イヌマキ
スギ、ヒノキについては、農林水産省森林総合研究所九州支所に潮害で褐変したという情報があるが、イヌマキについてはない。刈り込みにかなり強い樹種であり、また岬のような場所や、漁村でもよく植えられて生育しているので、潮風害にも強い樹種と推測される。
鹿児島県南部や南西諸島では枯損がめだつが、これはケブカトラカミキリとキオビエダシャクの被害であって、潮風害ではない。潮風害による生理異常とこれらの種の加害との関係は全く調べられていない。
現時点で枯損が目だたなければ特に問題はない。葉の多くが強風でちぎられている場合は、一時的に防風機能の低下がある。全部の葉がちぎられた場合には、キオビエダシャクの食害で枯れた例から枯損する可能性があるが、芽が残っていれば萌芽する可能性は高い。