果樹茶業研究部門

果樹の災害対策集

4.被害樹の防寒方法はどうすればよいか

まず防寒対策が必要かどうかの判断を行うことが必要である。判断基準としては、天気予報、園地の地形、樹勢や栄養条件、落葉や新梢発生の状況、品種ごとの耐寒性などがあげられる。以下に、寒害(凍害)および寒風害に対する具体的な防止対策を記す。

1) 基本事項
潮風害などを受けたものは、無被害樹より枝幹部の日焼け症が発生しやすいこともあり、凍害防止もかねて白塗剤の塗布や藁巻きなどを行う。落葉被害樹は樹勢が低下しており,耐凍性は低い。

2) 寒害対策
次の1.から6.までの方法を、単独または組み合わせて行う。

  • 被覆法(直接、間接)
    寒冷紗、こも、その他の被覆資材で樹体を覆い、被覆内気温の低下を防ぐとともに、被覆内樹体の放射冷却を防止する。
  • 結束法
    若木では亜主枝、成木では側枝単位程度に、枝葉を適宜縄などで結束することにより、結束した内部の枝葉を保護する。低温が余りきびしくない時に行い、前項で被覆資材が不足するような場合に用いる。
  • 送風法
    風が弱い晴夜に放射冷却が強く、接地逆転層が発達し、地上10m付近と樹冠との温度差が3~4℃にもなり、近傍の気温よりも果実や樹体温が更に低くなるような場合に、地上6~10m付近に設置した大型の送風機で、上層の暖気を地上付近まで吹き下ろして撹拌混合し、葉温(樹体温)や気温を高める。逆転強度の大きい地形のところでは効果があるが、上下層の暖気と冷気を混合しても、樹冠付近の気温が低温限界温度以下になる場合には効果が少ない。
  • 燃焼法
    重油や各種資材を燃焼させ、園内の気温を暖めるとともに熱源からの放射により樹体温を直接上昇させる。その効果には、燃焼量や火点数および熱源の大きさ、熱効率、火点の配置、気象条件が大きく関係する。
  • 散水氷結法
    寒害が発生する放射冷却の激しい夜間に、スプリンクラ-などを用いて一定時間の間隔で連続的に散水すれば、水滴が過冷却により結氷するので水1gにつき 80calの潜熱が放出される。次々に水滴が結氷すれば、樹体温はほぼ0℃付近に保持できる。しかし、カンキツへの散水氷結法は、氷結した水が拡大し、その重量で太枝が裂け、かえって被害が激しくなるおそれがあるだけでなく、ウンシュウミカンの被害発生限界温度(-7~-8℃)以下に気温が低下した時には、10mm/hr(1時間で10a当たり10tの水に相当)以上の水量を必要とするため実用的ではない。
  • 煙霧法
    人工的に発生させた煙霧を空中に滞留させることにより、設置気層の冷却を防止して樹体を保温しようとするものであるが、まだ実用的に可能な技術としては完成していない。

3) 寒風害対策
強風が続くと葉柄基部が脆弱化して落葉に至るが、その限界風速は7m/s付近である。園内の風速を7m/s以下に弱めれば、落葉は起こりにくい。

  • 防風垣の整備
    防風樹(垣)が被害を受けている場合には、緊急に防風ネットなどの設置を行う。設置基準および方法については、「真木(1987)、風害と防風施設、文永堂」などの文献を参照されたい。
    冷気が地形的に停滞しやすい場所では防風垣がかえって寒害を助長することがある。このようなところでは垣根の下(地際)の密閉度を下げる(刈り込むか一部除去)か、防風垣と樹冠との間をあけると良い。
  • 被覆法
    寒冷紗、こも、その他の被覆資材(化学合成繊維類が使われることが多い)で樹体を覆って被覆内気温の低下を防ぐとともに、被覆内樹体の放射冷却を防止する。
    また、寒風害対策としても、被覆資材を用いて寒風や枝葉の揺れを緩和し、被害の発生を防止する。