果樹茶業研究部門

果樹の災害対策集

7.海水が浸入した園地の除塩対策(除塩の方法とメカニズムの具体的資料)と、腐植物の投入、盛土などの事後対策について知りたい

海水の園地内浸入による塩害発生の原因は、主に土壌溶液の浸透圧上昇に伴う水分吸収阻害と特殊イオン(ナトリウム、塩素、硫化物など)の過剰吸収による栄養および代謝阻害であり、樹園地の回復にはこれらの塩類を速やかに園外に除去する必要がある。洗除水源としては雨水と潅がい水が考えられるが、できるだけ水源を確保して早い時期に多量の水で洗い流すことが望ましい。雨水などの土壌浸透を円滑にするため土膜を破砕する程度に地表面を軽く耕起するとともに、石灰質資材(約10a 当たり100kg) を混和してナトリウムをカルシウムと置換することによって塩分の溶脱を容易にする。用いる石灰質資材は、肥料用石灰でもよいが硫酸カルシウム(石こう)が効果的であり、除塩剤としても市販されている。排水不良地では、溶脱した塩分含有地下水の迅速排除と含塩地下水位の低下を図るため、園外に通じる幹線、支線の除塩排水溝(明渠、暗渠)を設ける。

さらに、有機質資材の投入や客土の実施も、園地土壌の理化学性を改善するうえで有効である。栽植樹がある場合には、土面蒸発を抑えて毛管上昇による塩分の表層集積を軽減する効果も期待できる。なお、家畜ふん有機物のように塩分を多く含む有機物の施用は避けた方がよい。

なお、これらの作業を進めるに当たっては、土壌中の海水汚染の程度や回復状況を土壌診断(交換性塩基、電気伝導度など)によって的確に把握しておく必要があり、普及指導機関との連携が望まれる。また、具体的な関連資料としては、以下のようなものがあるので参照されたい。

  • 米田茂男(1958):塩害と土壌,農及園,33:7~9
  • 村中靖洋ら(1972):カンキツの塩害に関する研究,広島果試研報,1:25~39
  • 東近農試(1961):伊勢湾台風による農作災害とその技術対策に関する調査研究報告,東近農試特別報告