果樹茶業研究部門

果樹の災害対策集

12.落葉後に秋芽が発生する樹体生理、特に根との関係について教えてほしい

新梢の発育は、樹体内における生理活性物質の生成量、蛋白合成などに必要な養分の供給量、光合成産物の転流・集積量など多くの要因が関与しているが、発芽に際しては生理活性物質の影響が最も大きいと考えられる。生理活性物質のうち、サイトカイニンは根で、ジベレリンは根と芽で生成され、発芽および新梢伸長の促進作用を有する。また、オーキシンは芽や葉で合成され、発根を促進し、発芽を抑制する作用がある。

潮風による被害樹は、落葉が多いほど被害後の新梢発生も多くなる傾向がみられる。一方、根部については落葉が多いほど細根の枯死量が増加することが認められている。被害樹では、細胞分裂の促進作用があるサイトカイニンや生長促進作用があるジベレリンの供給器官である細根が枯死するにもかかわらず、新梢(秋芽)の発生は増加している。このことから、落葉後にみられる大量の新梢発生は、根で合成されたサイトカイニンやジベレリンの供給による萌芽促進が原因というよりも、葉で生成されるオーキシンによる発芽抑制作用が落葉によって低下することが引き金になっていると考えられる。