果樹茶業研究部門

果樹の災害対策集

15.マルチ栽培における台風対策の要点を教えてほしい

糖度向上を目的としたマルチ栽培の普及が著しいが、台風災害を受けやすい難点がある。台風による被害は、強風による被覆資材の破損とそれに伴う雨水の浸透、豪雨に伴う排水集中による石垣崩壊や土砂崩れなどの水害、樹勢低下に起因する潮風害による落葉の助長などである。そこで、台風対策としては、次のようなことに留意する必要がある。

マルチ資材の破損については、被覆部分の内側に風が入ってあおられないように、樹幹結束部や資材の末端を丁寧に固定する。また、破損した場合には、残っている被覆部分を開放して土壌中に入った水分の土面蒸発を促し、よく乾いてから再被覆する。

水害については、台風に限らず梅雨末期の集中豪雨でも発生する可能性があるので、園地の基盤整備を行って集排水路を確保することが基本である。マルチ栽培の導入に当たっては、急峻な地形や崩壊しやすい土質の園地、過去に水害が発生した園地、下方に人家のある園地などは避けたほうがよい。また、地域全体の被覆面積の割合を制限して、降雨後の表面流去水の急増を緩和することも必要である。例えば、同一地域のマルチ栽培面積を全体の1/3程度に制限して、樹勢の回復も兼ねて2~3年単位のローテーションを組む考え方もある。なお、園内に浅い集水路を掘って、排水流出による隣接園地とのトラブルを避ける配慮が望まれる。

マルチ栽培では、樹体の水分ストレスが大きいため細根が傷んで樹勢も低下しているので、潮風害を受けた場合に落葉の程度が大きい。普段から堆肥施用で細根の保護に努めるとともに、過乾防止・除塩洗浄などの意味で潅水施設を整備しておくことが望ましい。