果樹茶業研究部門

果樹の災害対策集

1.落葉・落果した樹の翌年の収量をできるだけ確保する方法を知りたい

落葉が激しい場合には、光合成産物の生成が低下して貯蔵養分が減少する。同時に、補償作用として枝葉を新たに生じるための萌芽が始まり、新梢や新葉が生長する。新たな器官形成のために養分の消耗が増大して、樹体の貯蔵養分はさらに減少する。貯蔵養分の蓄積量を左右する条件の一つに落葉時期の問題があり、この時期が早いほど樹体に及ぼす影響も大きい。林(1960)によると、貯蔵養分は翌年の発芽・発根・開花・幼果の発育に重要であり、9月頃の葉の存否が大きく影響すると報告している。

 

1) 早期における軽度の落葉
落葉程度が軽ければ新梢が多く発生することはないと考えられるが、果実が着果している時期に発生すると果実の発育が抑制される。このため、発生した新梢は摘心、摘芽などを行って生育の安定に努める。このような処置により、当年の果実発育と品質保持のみならず、翌年の花芽確保も可能になる。

2) 後期における軽度の落葉
収穫直前期以降の落葉は、気温があまり高くなくて降雨が少なければ、萌芽も少ないので大きな問題となることはない。落葉の程度によっては、日焼け果を生じる可能性があるので、そのような果実から順に収穫するなどの注意が必要である。翌年度への影響は、小さいと考えられる。

3) 早期における激しい落葉
7~8月に激しい落葉が生じた場合は、果実の落下も多いため着果負担が減少して、栄養生長が旺盛になる。このような条件下では、翌年に発芽すべき花芽が年内に発生して、不時開花することが少なくない。果実が落果しなかった場合は、日焼け果を生じたり、時期によって果実の発育が不良になることがある。発生した芽は生育しても充実せず、葉が黄化することが多い。新梢の発生後には,液肥を葉面散布して展葉と緑化を促進する。生長が旺盛な場合は,積極的に摘心などを行って新梢の充実に努める。
新梢・葉には黒星病、黒斑病、ハマキムシなどの病虫害が発生しやすいため、適宜防除して充実した枝葉を確保する。落葉で陽光が骨格枝に直接当たるため、枝の日焼けが発生しやすいので,新聞紙を巻いたり、白塗剤を利用して保護する必要がある。新たに萌出した枝梢には、アブラムシやハマキムシなどの発生が多くなる可能性があるので、適宜防除して枝葉の充実に努める。

4) 後期における激しい落葉
9~10月の台風襲来で激しく落葉した場合、収穫前の品種では落果も著しく、残った果実にも日焼けなどの障害が多く発生する。このため、成熟期に達したものは日焼けしそうなものから順に収穫する。 100%落葉した場合には新梢の発生や不時開花が多いが、50%内外の落葉であれば再生長は起こりにくい。新梢が多く発生した場合でも、時期的に生育を促進する意味はないので、状況に応じて摘心などを行って樹勢を安定させることが望ましい。新梢発生の有無にかかわらず再生長が起こらない時期になったら、枝葉を充実させるため、窒素含量の低い液肥を葉面散布して貯蔵養分の蓄積に努める。