果樹茶業研究部門

果樹の災害対策集

4.不時開花の花粉は実用性があるか

通常であればナシの花粉は、2~3月の活動開始期になって胚珠と同じ時期に形成される。鳥取県下における‘長十郎’のえき花芽の場合、花粉の四分子期は開花24~25日前で、短果枝の花芽の方が長果枝よりわずかに早い。その後、発育が進んで開花期になると稔性のある完全花粉が形成される。外界の影響を受けやすいのは、花粉四分子期から空胞期までの期間である。

平田(1970)は、ナシの花を自然開花の7~8日前に、樹全体に温度処理してその後の花粉の発育状況を調査した。その結果、平常温を23~25℃とし、1日のうち10時間3~5℃の低温に置いた樹では発芽力の低い未熟花粉が多く形成され、同様に40~42℃の高温に置いたものも開花は早まるが、ほとんど発芽力のない空虚花粉となった。このように、自然開花に近い花でもその発芽力は温度に左右されやすい。まして、樹体の異常から形成された花は十分に発達しておらず、その花から得られた花粉の稔性は低いものと考えられる。従って、不時開花の花粉の実用性は極めて低い。