果樹茶業研究部門

果樹の災害対策集

1.台風7号は、奈良、和歌山両県を中心にカキ産地に甚大な被害をもたらした。その被害実態について知りたい

奈良県では最大瞬間風速 50.3 m/s(西南西、奈良県果樹振興センター)、24時間雨量 71.0 mmを記録し、和歌山県でも瞬間最大風速 48.1 m /s(西南西、橋本市)を記録した。これらの地域はこれまで台風による被害の経験が少なく、また、台風7号の接近速度が速かったため、大きな被害を受けた。和歌山県全体のカキ園の被害面積は、2,690ha(被害面積率95%)であったが、その中でも1,191haと県全体の約70%を占めた伊都地方における市町村別の被害面積は、いずれの市町村とも70%以上の範囲で減収程度が30%以上であった(表1)。

今回の被害の特徴は‘刀根早生’などの収穫初期に襲来したことから、多くの落葉、落果がみられ(写真1、2、3)、また、分岐角度の狭いものや車枝で主枝の裂開が多発したことがあげられる(写真4、5)。また、記録的な強風であったため樹の倒伏被害が多発した(写真6、7)。この場合、樹の倒伏は樹齢10年生以下の若木で多く、落葉は‘刀根早生’より‘上西早生’で多かったが、樹体の被害は逆に‘刀根早生’で多く、品種により強度が異なっていた。

カキ園では防風樹や網の設置は少なく、それらの効果は確認できなかったが、リンゴなどの例から、防風網などの設置があれば被害が軽減されたとも考えられる。

表1.台風7号による和歌山県伊都地方のカキ園の被害面積(和歌山県、1998年)

 

写真1 カキ‘刀根早生’の強風による落葉・落果状況(和歌山県、1998年9月)
写真1 カキ‘刀根早生’の強風による落葉・落果状況(和歌山県、1998年9月)

 

写真2 カキ‘刀根早生’の強風による落葉・落果状況(奈良県、1998年9月)
写真2 カキ‘刀根早生’の強風による落葉・落果状況(奈良県、1998年9月)

 

写真3 カキ‘富有’の強風による落葉状況(和歌山県、1998年9月)
写真3 カキ‘富有’の強風による落葉状況(和歌山県、1998年9月)

 

写真4 カキ‘刀根早生’主幹の強風による裂開(和歌山県、1998年9月)
写真4 カキ‘刀根早生’主幹の強風による裂開(和歌山県、1998年9月)

 

写真5 分岐角度が狭いために生じた腐朽部からの裂開(奈良県、1998年9月)
写真5 分岐角度が狭いために生じた腐朽部からの裂開(奈良県、1998年9月)

 

写真6 強風による倒伏 西から風を受け、東側に倒伏(和歌山県、1998年9月)
写真6 強風による倒伏 西から風を受け、東側に倒伏(和歌山県、1998年9月)

 

写真7 倒伏により露出した西側の根(和歌山県、1998年9月)
写真7 倒伏により露出した西側の根(和歌山県、1998年9月)