果樹茶業研究部門

果樹の災害対策集

4.落葉被害樹では貯蔵養分の不足が懸念されるが、冬季における貯蔵養分の動態について教えてほしい

9月の台風被害直後から冬季(12~1月)および春季(3月)の貯蔵養分の変化について、対照樹と50%および100%落葉樹で枝梢内の貯蔵養分を比較検討すると‘刀根早生’では被害直後の9月末では差異はみられなかったが、12月では糖含量は100%落葉樹で、デンプン含量は両被害樹で低下していた。3月ではデンプン含量は対照樹>100%落葉樹>50%落葉樹の順で高かった(表3)。‘平核無’では9月には差異はみられず、12月は100%樹でデンプン含量が低く、3月でも100%樹のデンプン含量が著しく低下していた。さらに、‘富有’では1月の糖含量は100%樹で低い傾向であり、デンプン含量も9月および1月で100%樹が低い値であった。3月のデンプン含量も対照>80%落葉>100%落葉樹の順に多かった。このように12月、1月の休眠期における枝梢中のデンプン含量は3つの品種のいずれも落葉程度の高いものほど低く、発芽前の春季ではその差異は拡大した。糖含量についても冬季の休眠期間中はデンプンと同じ傾向を示した。

こうしたことから落葉被害の大きな樹体ではデンプン貯蔵量が少なくなり、春季にはデンプンから糖への変化量の割合が大きくなるため、発芽前後には貯蔵養分の不足することが考えられる。また、発芽後の新梢や果実の初期生育は前年の貯蔵養分に負うところが大きいため、翌年の樹体生育や果実肥大に影響することが考えられる。こうしたことは貯蔵養分の貯蔵庫である根部の翌年の生育不良、根量低下の原因にもなると予想される。

表3.カキ‘刀根早生’における摘葉処理が枝梢内の炭水化物、窒素含量および乾物率に及ぼす影響(和歌山県、1998年)