果樹茶業研究部門

果樹の災害対策集

1.台風後にカキ炭疽病の感染・発病が助長される恐れがあるが、その実態と防除法について教えてほしい

台風7号通過後の炭疽病の発生について調査したところ、発生園率、発病果率ともに増加しており、台風による強風雨が発生に影響を与えていると考えられた(和歌山県、1998年)。強い風雨によって病原菌の飛散が助長され、園内の菌密度が増加することが考えられる。従って、被害直後に殺菌剤の散布を行い、炭疽病の発生を最小限にとどめるとともに、翌年への越冬伝染源を減らすため、冬季には粗皮削りや落葉処理などの耕種的防除に努める。また、風当たりの強かった園では防風ネットを設置して今後の強風対策とすることが必要である。

‘富有’園における台風後の炭疽病発生園率の調査例では、台風前の6%から台風後は約40日で、91%まで著しく上昇し、発生果率も台風前平均0.25%から通過後18日で、2.8%まで増大した(和歌山県、1998年)。台風による落葉被害程度と発病果率との間には有意な正の相関がみられている。台風後には、樹体にトップジンM、ベルクート、ゲッター、アミスター10フロアブル、スコア水和剤10などの各種水和剤を品種や生育ステージに応じて散布する。これらの薬剤のうちベルクートは‘西村早生’に薬害が出やすい。殺菌剤の使用は、収穫前使用時期、使用回数などの制約があるため、安全使用基準や指導指針に従って散布することが大切である。風によって枝の折れたところは平滑に切り、トップジンMペーストなどの保護剤を塗布する。

 

写真20 カキ‘刀根早生’における台風傷害果の炭疽病による軟熟化
写真20 カキ‘刀根早生’における台風傷害果の炭疽病による軟熟化
(和歌山県、1998年)