果樹茶業研究部門

果樹の災害対策集

3.落葉被害樹の樹勢を早期に回復させるためには、秋冬季には葉面散布より液肥の土壌施肥の方が効果的であることを示しているが、その施肥指針について知りたい

落葉は、本台風によって多くみられた被害であり、落葉によって葉中養分が失われたことから、被害からの早期回復を図るためには速やかな養分の供給が必要であるが、土壌施肥と葉面散布の効果は、施用する時期すなわち樹体の生育ステージによって異なると考えられる。

落葉程度の異なる樹体において、秋季の窒素の施用形態の違いが樹体内分配に及ぼす影響を重窒素を用いて検討すると、葉面散布、土壌施用(液肥)とも落葉程度が高い樹体は、葉への窒素の分配率が極めて高く、それだけ他の器官への分配が低下した(図6、7)。このように、葉面散布と土壌施用の両方とも、秋冬季には落葉する部位に吸収窒素の多くが集積してしまうが、液肥の土壌施用の方が、樹体乾物重当たりの吸収窒素量が優れていたことから、秋季においては土壌施用が葉面散布に比べて、樹体の回復にはより効果が高いと考えられた。さらに、被害樹で特に落葉程度が大きい場合には、葉面散布液の吸収面積が減少しており、吸収量には限度があることからも、根への速効性肥料の施用効果が高いと判断される。この試験での施用時期は、秋季の終わりに近く、気温の低下に伴って葉の機能も低下してきた時期であり、いずれの季節でも土壌施用が優れているとは本試験からだけでは言い難く、夏季についてはさらに検討を要する。

カキの根は、一般に塩類の濃度障害を起こしやすいことが指摘されている。また、落葉、枝折れなどに伴って、根の量や活力も低下していることや、秋冬季には吸収される量は急激に減少することから、肥料の大量施用は必要ではない。窒素の吸収は、土壌中の可給態窒素の量よりも植物自体の条件の方が、吸収により大きく影響している例からもこのことはうかがえる。

 

図6 秋季における重窒素土壌施用カキ樹の器官別分配
図6 秋季における重窒素土壌施用カキ樹の器官別分配
(果樹試験場カキ・ブドウ支場、1998年)

 

図7 秋季における重窒素葉面散布カキ樹の器官別分配
図7 秋季における重窒素葉面散布カキ樹の器官別分配
(果樹試験場カキ・ブドウ支場、1998年)