果樹茶業研究部門

果樹の災害対策集

1.台風被害後の果実の肥大・着色・品質はどうなるか

落葉程度が50%と80%の‘富有’カキで、その後の肥大・着色を調べたところ、落葉程度による品質への影響は果実糖度でのみ認められ、50%落葉より80%落葉が約1度低くなった。50%落葉樹の残った果実を半分摘果し、果実肥大・糖度が改善されるか調査したが、その効果は認められなかった(奈良県、1998年)。

結果枝が折れたり果梗枝に損傷が生じた場合、果実の肥大が停止し、着色が異常に進行してしまう場合がある。さらに放っておくと樹上で軟熟化したり、反対に硬化する事例もみられた(和歌山県、1998年)。いずれも出荷に耐えうる果実ではないので、処分すべきである。

落葉の被害の多い園では、枝に果実だけが着いている状態で収穫まで肥大や着色が進行することになる。台風の被害から収穫期までの期間があった‘平核無’や‘富有’では、落葉程度の大きい場合、被害直後からしばらくは果実肥大が鈍化する。一方、枝梢中の貯蔵養分は落葉程度が激しい区ほど減少し、発芽期に向うにつれ、落葉程度の軽微な区との差は広がる傾向にある(和歌山県、1998年)。従って、落葉程度が激しい場合、本来貯蔵される養分の一部が果実へ転流されると考えられる。

着色は落葉程度が激しい区ほど進み、特に果底部でその傾向が顕著であることから、落葉が一種の「摘葉処理」となるためと考えられる。

果実品質への影響は、落葉程度が高いと糖度が低下し、‘富有’ではヘタスキが多くなる傾向がある。

これらのことから、台風被害当年の果実生産の対策としては、台風通過後に生じた傷果で樹上に残っているものは早めに摘果することが大切である。これにより出荷可能な残存果実の肥大を促進させ、果実品質を高めるととともに、貯蔵養分のロスをできるだけ少なくすることができる。