果樹茶業研究部門

果樹の災害対策集

2.収穫期が近い時期に台風が襲来した場合、収穫・出荷時の留意点と'刀根早生'や'平核無'の傷被害果実の脱渋後の日持ち性について知りたい

‘刀根早生’で出荷可能な程度の傷果について、脱渋後の軟化率が高い傾向にある。しかし、‘平核無’で人為的に傷処理した果実については、傷の種類および程度と脱渋後の軟化との関係は認められず、果面への傷害が軟化の主因とは確定できないが(和歌山県、1998年)、果実が樹上にある状態で結果枝の折れや果梗枝に損傷が生じた場合の方が、収穫後の軟化の発生に影響が及ぶものと考えられる。しかし、樹上で被害を受けていても、被害直後に急いで収穫した場合、外見上に影響がまだ現われていないため、その時期に収穫された果実の取り扱いには十分な注意が必要である。台風通過直後に収穫した果実は、傷によって数日以内に軟化することがある。そのような恐れのある場合には、樹上に放置すると数日中に軟化する。台風通過後は数日間収穫をせずに様子を見、樹上で軟化した果実を見極めてから収穫する。傷果、汚損果は流通途中で軟化することもあるので、丁寧に選果する。

なお、被害果実の脱渋性そのものには問題は認められなかった(和歌山県、1998年)。

表11.カキ‘刀根早生’の台風被害による落葉程度別脱渋後軟化の累積発生割合(奈良県、1998年)

また、落葉被害が大きいほど脱渋後の軟化が多くなる。‘刀根早生’を用いた再現試験では50%と80%の落葉率の果実の軟化を比較すると落葉率の大きい果実での脱渋後軟化の発生率が増大する傾向がみられている(表11)。また、果面に傷があると軟化率が高まった。軟化の進行の速度は被害を受けた果実の熟度にも影響される可能性があり、それは果実からのエチレン発生量や果実呼吸の多少との関連が考えられる。