果樹茶業研究部門

果樹の災害対策集

台風7号は中心気圧が比較的高い割に風が強かったという特徴があった。その強風発生のメカニズムについて教えてほしい

「なぜ中心気圧が比較的高い割に風が強かったか」に対する答としては、まず、7号が台風の典型的構造(明瞭な眼、中層の暖気核[←中心の上空数kmまでの高温状態を指し、台風の典型的な特徴の1つ])をほぼ備えた状態で上陸したことが挙げられる。言い替えると、7号は「台風らしい構造を維持した、台風らしい台風」だったということである。

また、上陸後の移動速度が速かったことも強風の一因と考えられる。一般に、台風の中心付近の風には台風の移動速度が加わる性質があるからである。

さらに、台風が近畿地方を通る際には、中心の後面に特に風の強い領域が存在し、奈良県などに著しい南~西の強風をもたらした。この領域は強雨・低温域の前面に対応しており、上記の強風はこの強雨域から吹き出す風という性格を持っていた。この強風の形成には、中上層における降雨帯への乾燥空気の侵入に伴う冷却がかかわっていると考えられる。具体的には、(1)乾いた空気によって雨粒が蒸発して気化熱を奪い、空気が冷やされた、(2)冷えた空気は下降して地上で吹き出し、風速を増加させた・・・・というシナリオであるが、より詳しい物理機構の解明はなお今後に残されている。