果樹茶業研究部門

果樹の災害対策集

強風による樹体被害を客観的に評価するためのプラントキャノピーアナライザーを用いた測定法について教えてほしい

本装置による測定法は既報(山本ら, 1995)に準拠する。測定原理としては、個体群群落内の透過光を特殊な魚眼レンズで測定することにより、葉面積指数(LAI)や葉身傾斜角(MTA)を推定できることに基づき、非破壊、迅速かつ圃場での使用が容易である。

測定法としては、センサー部を樹冠外の上部に配置して太陽からの入射光を測定した後、直ちに樹冠内の地上1.5mの高さで透過光を測定する。両者の測定値から本体に内蔵されたプログラムにより樹冠による太陽光の遮蔽程度が計算され、この測定値を用いて放射移動モデルを利用して、LAIおよびMTAが変換算出される。樹冠外部での太陽からの入射光の測定は1回で良いが、透過光の測定は個体群内の光分布が均一でないため数回の測定値を平均する必要がある。ここでは、測定1地点あたり3回の測定値の平均をとる。

実際の果樹園での測定では、対象の樹冠を格子状にグリッドにわけ、その内部にある葉数を測定する。次に、プラントキャノピーアナライザー(LAI-2000、LI-COR製)によりLAIとMTAを測定し、落葉を想定してランダムに葉を取り除きながら、キャノピーアナライザーによる測定を繰り返す。測定後採集した葉の葉面積を、自動葉面積計(AMM-7、林電工製)により測定し、葉数から個葉の平均葉面積を求める。先に測定した各グリッドごとの葉数に個葉の平均葉面積を掛け、得られた葉面積を各グリッドの地上への投影面積で除したものをここでは実測葉面積指数とする。

キャノピーアナライザーによるLAIの測定値と実測値のキャリブレーションを行う。実測値と計測値とは高い正の相関があり、その相関係数は0.926と高く、 十分に実用的な推定に使用可能である。LAIの実測値と計測値との間の推定誤差が十分に小さく、実用性を確認したならば、次にLAI計測値と測定に供試したグリッド内の葉数との関係を解析する。これは、台風などの強風害による葉の落葉をシミュレートして、落葉被害の評価法を得るためである。ただ、今回の測定時が10月初旬であったため、最大葉数が展開していた盛夏期に比較すればやや葉面積指数が小さい傾向であったことと、測定対象樹の落葉が早い時機から始まっていたことなどのため、落葉率が0%の状態でのLAIが2.5であった。それでも、計測したLAIと落葉率との間には、次式に示した高い負の相関関係が認められる。

 

落葉率(%)=100-40.82(LAI計測値)

 

以上の結果から、キャノピーアナライザーを使用した強風被害による落葉率の評価は十分に実用性があるが、樹種や仕立て方が相違したり、被害時期が異なる場合には、事前に上の関係式を求めておくか、あるいは被害園の内外で同じ樹種と仕立て方で被害の少ない樹または園地での調査を同時に行うことでキャリブレーションが可能である。

参考文献:山本晴彦・鈴木義則・早川誠而:プラントキャノピーアナライザーを用いた作物個体群の葉面積指数の推定, 日作紀, Vol.64, No.2, 333-335, 1995.