果樹茶業研究部門

果樹の災害対策集

3.果樹では強風を受けると物質生産力が低下するとされているが、その理由について教えてほしい

台風により落果や樹体損傷を起こした場合の被害は顕著であるが、被害がそこまで到らない一般の台風であっても、葉へのダメージが秋季の物質生産力を下げる。貯蔵養分量の低下は落葉により発芽、開花してしまった場合に顕著であるが、そのようなことがなくても、台風の被害が多い9、10月は、まだ光合成を行っている時期であるため物質生産力が低下すれば貯蔵養分量の減少が起きる。その結果、必ず翌年の果実肥大や収量に影響を及ぼす。

物質生産力の低下の原因は落葉と残った葉の光合成能の低下である。葉の損傷の程度は樹種、品種、時期によって異なるし、強風を受ける時間の長さなどによっても異なるため一概にはいえない。しかし、一般に風速20m/s程度の風であっても、長時間当たり続ければ5割以上落葉してしまう(表5、6)。また、残った葉でも葉がもまれ、葉内組織の損傷が起きるため、20m/s以上の風では光合成能力が大きく低下する。落葉と光合成能の低下の両方を加味して物質生産力の低下を推定すると、風速20m/s程度でも8日後までに処理前の10%程度まで低下してしまうことがある(表7)。

 

表5.送風処理がカキ、ナシの落葉におよぼす影響(果樹試、1998年)

 

表6.送風処理がナシの落葉におよぼす影響(果樹試、1998年)

 

表7.カキにおける送風処理後の物質生産力(果樹試、1998年)