果樹茶業研究部門

果樹の災害対策集

5.防風施設以外の恒久的対策を教えてほしい

台風災害の軽減を図るためには、防風施設のほかに、基本技術の励行、危険分散、耕地生態系の保全といった方策を幾重にも張り巡らすことが大切である。

1)基本技術の励行

従来から、果樹栽培では台風などの気象災害を軽減することを念頭において、樹勢を健全に維持させる技術指導がなされてきた。それには、多肥多収を戒め、適正な肥培管理と適正着果量を守り、樹勢を健全に維持すること、土壌は暗渠排水などに努め、また、改良資材を投入して土壌の改善と悪変防止に努めること、病虫害の適正な防止を実施することなどが主軸となって細目が指導されている。このような管理下にあった果樹では、徒長性および弱樹勢になることなく中樹勢に維持され、今回の台風でも被害が少なかったことが認められており、以上の指導が極めて重要であることが示されている。

2)危険分散

果樹の種類を多様化し、品種も早生から晩生まで揃えておくことが大切である。また、栽培型も露地の他に施設栽培などを組み入れた多様化が必要である。危険の分散化は消極的ではあるが、長期的には最も安全で効果が高い経営方法といえる。

3)耕地生態系の保全

台風のような自然の猛威に対しては、自然生態系の中に存在する安定化作用の活用こそ最も頼りになるということを忘れてはならない。私たちの祖先は、それを承知し、台風などの災害に対し、保水能力の大きい落葉広葉樹の山を維持、育て、気象変動の影響を受けにくい緩衝能力の高い耕地生態系を作り上げてきた。しかし、山は保水能力の小さい針葉樹に代えられ、また、近年の都市化の進行に伴い、耕地を取り巻く環境は大きく変化し、耕地の気象変動に対する緩衝能力が著しく低下してきている。台風などの気象災害に強い果樹地帯を構築するには、自然の中で機能している生態学的関係を知り、緩衝能力の高い耕地生態系を再生させることが重要な課題となっている。このことは、環境保全型農業を構築するための基本的な課題でもある。