果樹茶業研究部門

果樹の災害対策集

1.被害翌年の剪定はどのようにすればよいか

カキ樹は、もともと貯蔵養分の多い樹種で、成木であれば多少落葉したとしても慣行の剪定で良い。しかし、若木で落葉被害が多い場合には剪定にも気を付ける必要がある。

落葉樹の結果枝(翌年の結果母枝)中の貯蔵養分について調査したところ、落葉程度が激しいほど貯蔵養分は低くなる(和歌山県、1998年)。発芽後の生育初期は、前年の秋季に蓄えられた貯蔵養分に依存するところが大きいので、貯蔵養分の減少が翌年への生育におよぼす影響が懸念される。被害翌年の発芽期から開花期までの生育について調査したところ、落葉程度の激しい場合、発芽、展葉、開花が遅れる傾向が認められ、結果母枝当たりの着蕾数、1蕾重が減少し、葉色や葉面積の値の低下がみられた。

以上のことから、落葉被害の激しい場合、貯蔵養分が減少し、発芽後の生育への影響が大きくあらわれるため、剪定はやや強めに、充実した結果母枝を残し、貯蔵養分を集中させる必要がある。その際、結果母枝から発芽した翌年の結果枝に十分光が当たるよう、結果母枝の配置すなわち整枝にも十分気を配る必要がある。

一方、倒伏樹では、貯蔵養分の減少や断根などによる地上部と根とのバランスの崩壊などにより、落葉樹以上に発芽・開花の遅れ、着蕾数の減少、新梢伸長不良、葉の小型化など樹勢低下の恐れがある。従って、被害程度の大きい倒伏樹は地上部と地下部のバランスを考慮して、剪定程度を強めにし、貯蔵養分の浪費を防ぐとともに、受光態勢の改善に留意する必要がある。ただし、倒伏による根の損傷割合が高い樹は強剪定でも、樹勢の低下が著しく、回復が認められない場合もあるので、断根等の被害が甚だしい場合は改植も考慮する。

落葉が甚だしい樹では、貯蔵養分が減少して花芽の発育が不十分になり、結果的に開花数が減る。花数を確保するためには結果母枝を多めに残すような剪定が必要と思われるが、剪定を弱めると収量は増えるものの新梢伸長、果実肥大にはマイナスになる(島根県‘西条’、1992年)。しかし、剪定を強めると、花芽の発育が促進され、着果数が増える(表13)。品種・栽培条件(気候・土地・樹齢)により、剪定程度は変わってくるが、収量などを総合的に考えると平年並み~やや強めの剪定が適当かと思われる。

 

表13.カキ‘富有’における剪定程度が翌年の着花に及ぼす影響(奈良県、1998年)