「璃の香」ってどんなレモン?
かいよう病に強いレモンの新品種「璃の香」

レモンは、かいよう病に非常に弱く、雨が多い環境では大きな問題になることから、国内の産地は、温暖で雨の少ない地域に限られています。このため、現在、国内で消費されるレモンの約9割は輸入品です。そこで農研機構では、国産品を求める消費者の要望に応えるため、かいよう病に強いレモンの新品種「璃の香(りのか)」を開発しました。
「璃の香」の交雑親は何?
「璃の香」は、「リスボン」レモンにヒュウガナツの花粉を交雑してできた品種です。したがって、品種登録上はカンキツ属の交雑種になりますが、外観や想定される利用方法がレモンに近いため、レモンの新品種として普及を図っています。

「璃の香」の交配組み合わせ
「璃の香」の特徴
果実は200 g程度と大きく、「リスボン」レモンの約1.3倍です。果皮は薄く、苦味が少ないので皮ごと利用できます。果肉の割合が8割と高く、果汁が豊富です。また、種子が少なく、利用しやすくなっています。果皮が完全に着色するのは12月ですが、11月以前でも果汁が増えてくると、青いレモンとして利用できます。酸含量は「リスボン」レモンより少なめでまろやかです。香りは「リスボン」レモンよりも弱めですが、成熟するとレモンとヒュウガナツを足したような独特の芳香になります。また、加工適性が高く、マーマレードやマドレーヌなどの洋菓子にも利用できます。

果皮が薄く、種も少ない

マーマレード

クラッカーにマーマレードをトッピング
「璃の香」の栽培方法・普及予定地域
栽培方法

「璃の香」の結実状況
樹勢は強く、枝梢は直立性で、その発生密度はやや少ないですが、とげの発生は少なく、長さも短いため管理しやすいです。露地栽培では、一般のレモンに比較して、かいよう病の発生程度は明らかに低く、強い抵抗性を示します。また、慣行防除によりそうか病の発生はほとんどみられません。早期から毎年安定して収量が得られますが、結実が始まると樹冠拡大が緩慢になる傾向があります。また、果実の肥大は良好で、目的とする大きさに仕上げるためには着果管理が重要となり、果実の着け過ぎによる樹勢低下には注意が必要です。寒害による落葉もみられるため、寒風害を受けやすい地域においては防寒対策が必要となります。
普及予定地域
試作試験においては神奈川、三重、和歌山、広島、香川、長崎、宮崎、鹿児島の各県で有望と評価されています。苗木の販売は2016年から開始されており、今後、広くカンキツ産地に普及が進むと見込まれます。

「璃の香」についての研究成果
品種の特徴
- かいよう病に強く、大果で酸味がまろやかな レモン新品種「璃の香(りのか)」 (2014年5月23日農研機構プレスリリース)
- かいよう病に強く豊産性のレモン新品種「璃の香」 (2014年農研機構普及成果情報)
- 新たに登録される露地栽培が可能なレモン品種「璃の香」の長崎県における果実特性(2014 ながさき普及技術情報 第34号)
