畜産研究部門

飼料・栄養管理の工夫

飼料、栄養管理の工夫によるメタン排出量の削減は、牛の健康を第一にバランスのよいメニューで実現させることが重要です。

  • 牛からのメタンの排出量は、食べる飼料の量によって変わり、食べる量が増加すると1頭当たりのメタン排出量も増加します。ですが、食べた量に応じて乳や肉などの生産量が増加すれば、生産量当たりで換算するとメタン排出量は減少し、これにより飼う頭数を減らすことができるため全体からのメタン排出量を低減することにつなげられます。一方で、食べた分が生産につながらない場合は、1頭当たり、あるいは生産量当たりで換算するとメタン排出量は増えてしまいます。そうならないためには、牛が生産するのに必要な栄養量を正確に把握し、過不足なく飼料を給与することが大切になります。
  • 牛からのメタンの排出量は、食べる飼料の種類によっても変わります。例えば、濃厚飼料とよばれる穀類はカロリーが高いため、飼料中の穀類割合を高めると、食べる量を少なくすることができます。このことにより、摂取量当たりや一頭当たりのメタン排出量は減少します。また、穀類はデンプン質含量が高く、胃の中でプロピオン酸という短鎖脂肪酸を作る発酵を促進します。プロピオン酸が生成される過程では水素を取り込むため、結果的にメタン排出量の抑制につながります。ただし、濃厚飼料を増やし過ぎると亜急性ルーメンアシドーシスなどの病気を引き起こす危険があるため、注意が必要です。
  • 牛が食べる飼料中の脂肪含量を高めるとメタン産生に関わる微生物(プロトゾア)の活性が低下し、メタン排出量は低下します。脂肪酸カルシウムの添加は、メタン排出量を減らすことが知られています。ただし、脂肪含量を高めすぎると採食量の低下による乳量の低下を引き起こします。また、不飽和脂肪酸含量の多い油脂の過剰給与も乳脂率の低下を引き起こすため、注意が必要です。