畜産研究部門

メタン抑制資材

これまでに国内外の研究においてメタン抑制の可能性が示されたメタン抑制資材候補を紹介します。

※資材によっては短期給与の結果であり、長期間給与での効果の持続性についてはこれから検討するものもあります。

※海外で利用されている資材を日本の牛に給与する場合、牛や生産物を摂取したヒトへの安全性などを確認する飼料安全法(飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律)に則った手続きをとる必要があります。

  • カシューナッツ殻液:カシューナッツ殻を非加熱で抽出・成形することで得られるフェノール成分に含まれるアナカルド酸を利用する方法です。アナカルド酸を一定濃度以上にすると、酢酸や水素を生成するグラム陽性菌に対して抗菌的な作用を示します。抗菌的作用を示す胃内濃度になるよう牛に給与することで、飼料の消化率を落とすことなく、搾乳牛で1割弱、乾乳牛で2割弱のメタン排出量を削減します(真貝, 2014, 栄養生理研究会報, 58, 45-51.)。
  • イオノフォア:抗生物質。細胞膜の透過性に影響し抗菌活性や抗コクシジウム活性を示します。酢酸や水素を生成するグラム陽性菌に対して強い抗菌性があります。肉用牛へのモネンシンの投与では採食量が低下するもののプロピオン酸濃度の増加、飼料効率の増加、メタン発生量の低下などが観察されます。メタン低減効果は数ヶ月持続した後に消失することが確認されています。
  • 油脂、不飽和油脂、中鎖脂肪酸:油脂は酢酸や酪酸型発酵を行う微生物を減らすため、結果的に発酵産物である水素やギ酸が減り、それがメタン排出量抑制につながります。
  • フマル酸:微生物に利用されるときに水素を消費するため、結果的にメタン排出量抑制につながります。
  • カギケノリ:紅藻類の一種。ブロモホルムに代表されるハロゲン化物を多く含み、メタン古細菌の酵素を阻害します。産地によってメタン抑制効果が異なるといわれています。
  • 3-ニトロオキシプロパノール(3-NOP):化学物質。メタン古細菌のメタン合成系を阻害します。搾乳牛で3割程度のメタン削減が見込まれています。