畜産研究部門

08:プロジェクト研究事前評価会議報告

プロジェクト研究事前評価会議報告

プロジェクト名

放牧牛乳のプレミアム化に向けた家畜健全性評価指標の確立と牛乳中機能性成分制御技術の開発

プロジェクトの目的・概要

牛乳の消費量は、少子化や他飲料との競合で減少してきており、昨春には計画以上に生産された余剰乳が北海道で大量に廃棄されたニュースが全国に報道されたが、厳しい生産調整が続いている。そこで、本プロジェクトでは、機能性・健全(安全)性の高い牛乳を求める消費者のニーズ捉えたプレミアム牛乳を生産するために、放牧による牛乳の健全性・機能性に着目して放牧牛乳のプレミアム化をはかる研究を推進する。

放牧が牛にとって快適で病気にかかりにくい飼養法であることを科学的に検証し、健全性を証明するために、快適性については、生体ストレス物質・快適性物質および敵対行動・睡眠行動を指標として、放牧が家畜にとって快適な飼養方式であることを科学的に明らかにする。抗病性については、ワクチン応答や生体防御系遺伝子を指標として、放牧が病気にかかりにくい飼養方式であることを提示する。

機能性成分として抗ガン作用のある共役リノール酸、抗酸化作用のあるβ―カロテン、催眠作用・抗酸化作用のあるメラトニンを対象とし、これらの成分を多く含む放牧牛乳の生産技術を開発する。また、その他の機能性成分として消費者の関心が高い牛乳のアレルゲンタンパク質の構造や、免疫関連物質の動態を放牧牛乳において検討する。さらに、消費者の信頼を獲得するため、放牧牛乳の判別技術開発に適用できる特異成分を見出す。

参画機関等

主査、推進責任者、リーダー等

  • (主査):柴田正貴(理事・畜産草地研究所所長所長)
  • (推進責任者):畜産草地研究所放牧管理研究チーム長 栂村恭子
  • (1系チームリーダー) :畜産草地研究所放牧管理研究チーム上席研究員 假屋喜弘
  • (2系チームリーダー) :畜産草地研究所畜産物品質研究上席研究員 野村将

その他参画機関

(独)農業・食品産業技術総合研究機構・畜産草地研究所、動物衛生研究所、北海道農業研究センター、東北農業研究センター、東北大学

評価委員の氏名・所属

  • 小原嘉昭
    東北大学名誉教授(現:明治飼糧株式会社水戸研究牧場研究顧問)
  • 萬田富治
    北里大学獣医学部教授、付属フィールドサイエンスセンター長
  • 北澤春樹
    東北大学大学院農学研究科生物産業創成科学専攻助教授

評価結果の概要

(1)研究計画の達成度 A : A : A
(1)研究の達成度:現時点で、その目標に対してどの程度達成しているかについて4段階(A:達成、B:概ね達成、C:半分以上達成、D:達成が低い)とする。

(2)研究計画の達成可能性 A : A : A
(2)研究目標の達成可能性:最終的に目標の達成可能性がどの程度あるかを4段階(A:達成可能、B:ほぼ達成可能、C:達成には目標・期間等の見直しが必要、D:達成困難)で評価する。

○総括評価 1:1:1
○総括評価:1研究課題は順調に進行しており、問題はない。2研究課題はほぼ順調であるが、改善の余地がある。3研究課題の計画等を変更する必要がある。4研究課題の計画等を大幅に変更する必要がある。

総合コメント

A評価委員:
本研究課題は、乳牛の放牧時と舎飼い時を比較する試験設定となるため、課題担当者間の十分な打ち合わせと連絡システムの確立が必要である。放牧牛の快適性、抗病性、放牧ミルクの機能性について興味深い課題が多く含まれており、3年という短期間ではあるが、日本酪農の活性化に向けて、普及に結びつく素晴らしい成果が得られることを期待する。

B評価委員:
放牧効果を家畜の快適性・抗病性・生乳の機能性の要因解析によって検討する計画となっており、研究計画および目標は適切である。研究推進にあたっては各課題の相互連携が考慮されており、共通の供試家畜・分析サンプルを使用するなど各課題で得られた成果の共有化の努力が見られる。初年度に達成すべき重点目標も明確にされており、成果が期待される。

C評価委員:
我が国における牛乳の消費量が伸び悩む中で、消費者サイドは、安心・安全な牛乳・乳製品はもとより、高機能性に興味関心を示している。本プロジェクトは、そのようなニーズに答えながら、牛乳の消費拡大を考える点で大変有意義であり、その実現のために、放牧の健全性から機能性との関連を発展的に展開しようとする試みは高く評価できる。本研究で得られる成果は、牛乳の消費拡大につながるのみならず、放牧による牛乳中の機能性成分の制御技術を、実際の現場に対応する技術として提供でき、結果として関連産業の発展が大いに期待できる。小課題との連携を保ち、科学的根拠を整理し、得られた新知見を次年度の計画に反映させながら、是非とも有意義なプロジェクトにしていただきたい。

評価結果を踏まえた改善措置概要

評価結果を踏まえた改善措置概要限られた年限で効率的に研究を推進するために、小課題で実施する試験計画を一覧表にし、さらにサンプルの共有化と連携を図った。家畜適性評価と健康性評価の関連解析のために、快適性評価の家畜試験において家畜の抗病性に関連する遺伝子解析を実施する経費を強化費として追加配分した。また、メラトニンについては関連物質の分析と、香気物質について官能試験の実施が必要と判断し、必要な経費を該当課題に強化費として配分した。