畜産研究部門

08:プロジェクト研究事前評価会議報告

プロジェクト研究事前評価会議報告

プロジェクト名

体細胞クローン牛の作出率向上のための個体発生機構の解明

プロジェクトの目的・概要

体細胞クローンの飛躍的な作出率の向上、安定化を図るため、核移植に用いるドナー核やレシピエント卵子の前処理等による初期化機構への影響、体細胞クローン胚におけるエピジェネティクス制御異常の要因、および細胞遺伝学的異常による影響等、体細胞クローンに特有の異常発生要因を解明する。

  • ドナー核の初期化と核移植胚発生に関わる要因の解明を行い、レシピエント卵子の発育能及び保存率の向上に関わる要因の解明を通して、受胎性に富む体細胞核移植胚の生産をめざす。
  • 核移植胚におけるメチル化機構の解明とメチル化状態の評価やES由来クローン胚のエピジェネテックスと遺伝子発現制御機構の解明により、体細胞核移植胚における遺伝子発現と発生能の関係等を明らかにする。
  • 体細胞クローン胚や個体に関して染色体分配機構の解明や細胞質DNAの影響を解明して、クローン個体や胚の発生率向上や異常発生要因を明らかにする。

参画機関等

主査、推進責任者、リーダー等

  • (主査研究所):農業・食品産業技術総合研究機構畜産草地研究所
  • (主査):柴田正貴(理事・所長)
  • (推進責任者):塩谷康生(研究管理監)

その他参画機関

独)農業・食品産業技術総合研究機構・畜産草地研究所高度繁殖技術研究チーム、東北農業研究センター高度繁殖技術研究チームサブチーム、九州沖縄農業研究センター特命研究員、東京農業大学・農学部、応用生物科学部

評価委員の氏名・所属

  • 小畑太郎
    農林水産先端技術産業振興センター、農林水産先端技術研究所研究第2部長
  • 眞鍋昇
    東京大学大学院農学生命科学研究科高等動物教育研究センター・附属牧場実験資源動物科学教授
  • 小倉淳郎
    理化学研究所バイオリソースセンター(RIKEN BRC) 遺伝工学基盤技術室室長

評価結果の概要

研究計画の妥当性:A

プロジェクトが目指す目標に対して適切な研究計画であり、それに対応した研究組織である。

研究計画の達成可能性:A

各課題が連携を密にして、総合的かつ効率的に協力し合って研究を推進するならば必ずや目標に到達するものと確信する。

総合コメント

A評価委員:
体細胞クローンは主要部分が解決済みと捉えられる傾向にあるが、解決すべき課題はまだまだ多くごく一部が解明されているに過ぎない。本プロジェクトを着実に実施することにより、畜産現場にも応用できるような成果を期待したい。

B評価委員:
体細胞クローン動物の作出効率の向上を目指すに適した研究体制でありかつ陣容である。これらの優れたポテンシャルをもつ組織が有機的に連携して目標に焦点を定めて研究を集中的に進めることで、当初の目標に到達できるものと思う。ドナーの評価法開発、胚の評価法開発とそれらに連なる基盤研究もさることながらこれまで未踏であるレシピエントの品質の評価法の開発研究に関して一段と注力し、従来の研究知見から一歩踏み出した成果をあげることを切望する。

C評価委員:
本研究課題は、我が国の産業と科学の振興に無くてはならない研究である。全般的に無理なく現実的な計画でまとめられており、各研究計画の達成の可能性は高いと言える。しかし無難に計画しているだけに、これらの各研究計画の成果をいかに最終目標である体細胞クローン牛の作出率向上に結びつけるかについては、より緻密で柔軟な結果の検討、情報収集および共同研究作業が求められる。そして本課題の主旨としては、これらの現実的な計画、すなわち地道に進めればある程度の成果が得られる研究だけでなく、ブレークスルー的な技術開発研究も必要になるはずである。たとえ結果が得られなくてもオリジナリティの高い計画(当たれば大きい研究)も同時に遂行していただきたい。この明確な目標(40%以上の受胎率改善)が5年後に達成できるよう、各研究課題の代表者と分担者によるチームワークに期待する。各研究計画は無理なくかつ無駄なく5年後に達成できるようにまとめられている。それらの成果が最終目標(体細胞クローン牛作出率向上)につながるよう期待する。

評価結果を踏まえた改善措置概要

特別な措置は執らないが、本研究に対する期待の大きさや、"研究計画の成果をいかに最終目標である体細胞クローン牛の作出率向上に結びつけるかについては、より緻密で柔軟な結果の検討、情報収集および共同研究作業が求められる"などの指摘を踏まえ、推進責任者のリーダーシップを発揮しながら、着実に研究を推進することとする。