畜産研究部門

08:プロジェクト研究事前評価会議報告

プロジェクト研究事前評価会議報告

プロジェクト名

良質畜産物・飼料生産のための地球温暖化影響・適応策に関する総合的な研究

プロジェクトの目的・概要

一般に農業は気候の影響を強く受ける産業であり、温暖化の問題はわが国で食料を安定的に生産する上でも重要な課題である。中でも畜産業は2兆円規模の産業としてわが国の農業粗生産額の約1/3を占め、国民への良質な蛋白質供給源としての重要な使命を果たしている。しかし、家畜は恒温動物であり、温暖化による高温環境がその生産性低下に及ぼす影響は大きいと考えられる。これまでにも夏季暑熱が家畜や家禽の生産性に及ぼす影響やその対策技術について検討がなされ、一定の成果が得られるとともに、今後の研究の方向性として温暖化と家畜の繁殖性、畜産物の品質、穀物需要増大による飼料価格の高騰を背景に高温条件下でも良質な飼料作物生産が可能な技術開発が重要であることが示されてきた。このように、畜産業に対する温暖化の問題は多面的で、その慣性の大きさからも早期の取り組みが急務であるが、十分な対応がなされない場合には良質な畜産物の供給や畜産経営そのものに甚大な影響を生じると予想される。そこで、本プロジェクトでは今後中期的(2030年)な視野に立った有効な温暖化適応技術の開発を行う。

参画機関等

主査、推進責任者、リーダー等

  • (主査):畜産草地研究所所長 武政正明
  • (推進責任者):畜産草地研究所畜産温暖化研究チームチーム長 永西修
  • (1系・2系リーダー) :九州沖縄農業研究センター暖地温暖化研究チームチーム長 田中正仁
  • (3系リーダー) :畜産草地研究所畜産温暖化研究チーム上席研究員 月星隆雄

その他参画機関

(独)農業・食品産業技術総合研究機構・畜産草地研究所、九州沖縄農業研究センター

評価委員の氏名・所属

  • 板橋久雄
    日本獣医生命科学大学
  • 野島博
    千葉大学

評価結果の概要

本プロジェクトは、温暖化が家畜の繁殖性に及ぼす影響とメカニズムの解明、肉質を考慮した暑熱下での栄養管理技術の開発、および暑熱下での良質粗飼料安定供給技術の開発を目指すもので、いずれも、従来から重要視されてはいたが、対応策については不十分で早急な取り組みが必要である。その中で、暑熱の家畜への影響では暑熱ストレス第1軸として、メカニズムの解明や暑熱ストレスを抗酸化機能性飼料など給与飼料面から軽減しようとする研究戦略には新規性が認められ評価できる。また、飼料生産では温暖化で多発しているライグラスいもち病の抵抗性の作用機作の解明や効率的な防除技術など具体的な適応策の開発が組み込まれている。全体的に温暖化に向けた飼料生産から家畜生産までを目指しており適切であると評価する。しかし、研究期間は3年間と限られており、総合的な対策技術の開発は容易ではないが、温暖化研究の拠点として、公立・民間の機関および大学などの研究機関などと連携を密にして取り組めば、効果的な対応策の提示が期待できる。

評価結果を踏まえた改善措置概要

本プロジェクトを効率的かつ効果的に研究が進められるよう、研究リーダーが中心となり、研究グループ内外での情報交換や研究協力を円滑に行えるようなプラットホーム作りを行う。