畜産研究部門

09:プロジェクト研究毎年度推進評価会議報告

プロジェクト研究22年度推進評価会議報告

プロジェクト名

良質畜産物・飼料生産のための地球温暖化影響・適応策に関する総合的な研究

プロジェクトの目的・概要

温暖化の問題はわが国で食料を安定的に生産する上でも重要な課題である。中でも畜産業は2兆円規模の産業としてわが国の農業粗生産額の約1/3を占め、国民への良質な蛋白質供給源としての重要な使命を果たしている。そのため、これまでにも夏季暑熱が家畜や家禽の生産性に及ぼす影響やその対策技術について検討がなされ、一定の成果が得られてきた。その中で、今後の研究の方向性として温暖化と家畜の繁殖性、畜産物の品質、穀物需要増大による飼料価格の高騰を背景に、高温条件下でも良質な飼料作物生産が可能な技術開発が重要であることが示された。そこで、本プロジェクトでは、家畜の繁殖性、畜産物の品質、良質飼料作物生産を柱に、今後中期的(2030年)な視野に立った有効な温暖化適応技術の開発を行う。

参画機関等

主査、推進責任者、リーダー等

  • 主査:松本光人(畜産草地研究所所長)
  • 推進責任者:永西修(畜産草地研究所畜産温暖化研究チーム長)
  • 推進リーダー:田中正仁(九州沖縄農業研究センター暖地温暖化研究チーム長)
  • 推進リーダー:月星隆雄(畜産草地研究所畜産温暖化研究チーム上席研究員)

参画機関

(独)農業・食品産業技術総合研究機構・畜産草地研究所、九州沖縄農業研究センター

評価委員の氏名・所属

  • 板橋久雄
    日本獣医生命科学大学客員教授
  • 野島博
    千葉大学園芸学部准教授

評価結果の概要

本研究プロジェクトは暑熱ストレスの家畜の生産性や繁殖性への影響評価を行うとともに、酸化ストレスを指標として抗酸化物質利用による暑熱ストレスの改善技術を開発するものである。評価結果の概要として、暑熱が牛、豚の繁殖・生産性に及ぼす影響評価については、抗酸化ストレスを指標に取り組み、酸化ストレスの亢進により発情周期の延長や発情発現が不明瞭になること、生体での暑熱応答マーカーとしてのPGF2αの産生能を明らかにしたこと、肥育前期の海藻粉末の豚への給与で酸化ストレスが低減するなどの新たな成果が得られた。しかし、抗酸化ストレス指標を用いた適応技術については十分な解明にまで至らなかったが、実用性に繋がる研究成果として、いもち病の発生分布図の作成、殺菌剤種子粉衣による発病抑制法、高温耐性乳酸菌の利用など、高温環境下での飼料生産技術などが開発されている。課題により研究の進展程度に違いはあるが、論文の作成など成果の公表をより一層促進するとともに、今後これを基に残された課題に取り組み、成果が普及できるように努める必要がある。今後の取り組みを進める必要がある。

評価結果を踏まえた改善措置概要

得られた研究成果については学会や論文で成果の公表の取り組みを一層強化する。また、得られた成果をさらに展開できるよう、得られた成果や残された問題の論点を整理し、専門家などとの情報交換や研究協力を積極的に行ない、新たな研究資金獲得に向けた取り組みを行う必要がある