研究活動報告

「第12回 プラチナ大賞 」 優秀賞(先人の知恵活用賞)を受賞

情報公開日:2024年11月20日 (水曜日)

農研機構 農業環境研究部門の取り組みが、プラチナ構想ネットワーク「第12回プラチナ大賞」優秀賞(先人の知恵活用賞)を受賞しました。プラチナ大賞とは、イノベーションによる新産業の創出やアイデアあふれる方策によって地域の課題を解決することで「プラチナ社会」の目指す社会の姿を実現しようとしている取り組みに授与される賞です。

●受賞対象となった取り組み

水田からのメタン削減技術「中干し延長」を社会で実現する取り組み:従来の農法を少しアップデートした導入し易い技術を確立し、クレジット制度の方法論化で普及を推進

●取り組みの概要

2050年ネット・ゼロの達成に向け、農業分野からも温室効果ガス削減のための取り組みが求められています。温室効果が二酸化炭素の約25倍のメタンは、日本ではその45%が稲作を行う水田から排出されている現状にあります。我々は水田からのメタンを削減するために、従来から水稲栽培で行われており、新たな設備導入や手間を必要としない "中干し" という水管理技術に注目しました。

農研機構では農地から発生する温室効果ガス成分を高精度に測定する技術を開発してきました。その技術を用いて、全国8県9か所の農業試験研究機関と連携し中干し延長によるメタン削減効果の実証試験を行うことで、慣行と比較して中干しを1週間程度延長すると、栽培期間全体のメタン排出量が約30%削減するという結果を得ました。

この成果が行政施策とリンクし、「長期中干し」が農林水産省の環境保全型農業直接支払い交付金の取組メニューとなりました。また、2023年には、J-クレジット制度の方法論「水稲栽培における中干し期間の延長」が承認され、民間企業との連携で取り組みが広がりつつあります。

新たな設備や手間が不要で誰でもできる取り組みを行政施策と連携して普及することで、国内の水田メタン削減に貢献するだけでなく、この技術をモンスーンアジアの国々に展開することで、広く農業分野の温室効果ガス排出削減に貢献したいと考えています。

左から、小宮山宏 一般社団法人プラチナ構想ネットワーク会長、鈴木孝子 農研機構理事、須藤重人 農研機構農業環境研究部門グループ長、武内和彦 プラチナ大賞審査委員会審査委員長

●参考

第12回 プラチナ大賞 最終審査結果(速報)
https://platinum-network.jp/2024/11/06/18/34/