研究活動報告

令和4年度 ゲノム編集技術により得られたアラニンアミノ酸転移酵素を改変した穂発芽耐性コムギの栽培実験について

情報公開日:2022年11月 7日 (月曜日)

農研機構では、ゲノム編集技術により得られたアラニンアミノ酸転移酵素(注1)を改変した穂発芽耐性コムギ(以下「本ゲノム編集コムギ」という。)の野外栽培実験を、令和4年11月より開始いたします。

コムギは、収穫期に雨にあたると穂についた状態で発芽(穂発芽)します。穂発芽したコムギは品質が悪く商品価値が下がってしまうため経済的にも大きな損害をもたらします。
コムギの収穫期が梅雨と重なるわが国では穂発芽しにくい品種の開発が求められています。本ゲノム編集コムギは、農研機構と国立大学法人岡山大学の共同研究(注2)により作出したもので、種子の発芽に関わる遺伝子(種子休眠性遺伝子)の改変によって穂発芽耐性を向上させ、穂発芽被害の低減に貢献することが期待されます。
農研機構は、文部科学省が定めた「研究段階におけるゲノム編集技術の利用により得られた生物の使用等に係る留意事項について(通知)」に基づき、使用等に先立って「ゲノム編集技術の利用により得られた生物の使用等に係る実験計画報告書」を文部科学省に提出し、令和3年9月22日に受理されました。これを受けて、農研機構は、令和3年度に引き続き、農研機構内の実験ほ場において本ゲノム編集コムギの野外栽培実験を行います。(注3)
受理された実験計画報告書の内容については、下記の文部科学省のウェブページからご覧いただけます。

(注1) 改変した遺伝子TaQsd1は、その塩基配列から「アラニンアミノ酸転移酵素」をコードしており、その機能抑制により種子休眠が長くなることで、種子の発芽抑制が予想されます。
(注2) 当該栽培実験は、日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(A)「ムギ類種子休眠性遺伝子の分子進化機構の解明と精密育種技術の開発」及び、農林水産省委託プロジェクト「ゲノム編集技術を活用した農作物品種・育種素材の開発」により実施されます。
(注3) 共同研究先(岡山大学)において、異なった条件下での栽培データ取得のため栽培を実施します。栽培実験計画等の栽培に係る詳細は別途岡山大学から公表されます。(参照_下記岡山大学URL)

栽培実験の概要

栽培予定時期 : 令和4年11月上旬~令和5年6月下旬
栽培場所 : 農研機構 観音台第2事業場 隔離ほ場(茨城県つくば市観音台2-1-2)(注4)
(注4) 本ゲノム編集コムギは、カルタヘナ法*で規制される遺伝子組換え生物等には該当しませんが、栽培実験は予め届けられた実験ほ場で行います。
(* カルタヘナ法 : 遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律)

アラニンアミノ酸転移酵素を改変した穂発芽耐性コムギの栽培実験計画書(別紙)

掲載URL :
https://www.naro.go.jp/project/research_activities/files/nics202211_saibai_jikken_keikakusho.pdf

(参考)

問い合わせ先など
栽培実験実施者 : 農研機構 作物研究部門 所長 石本政男
問い合わせ先 : 農研機構 企画戦略本部 新技術対策課
電話番号 : 029-838-7138
URL : https://www.naro.go.jp/inquiry/index.html