研究活動報告

日本草地学会英文誌論文賞(Grassland Science Award 2022)を受賞しました。

情報公開日:2023年4月 6日 (木曜日)

受賞年月日

  • 2023(令和5年)年3月27日

業績

  • Effect of soil acidification on regrowth of orchardgrass (Dactylis glomerata) under application of grazing cattle dung, cattle manure compost, and chemical fertilizer

    Grassland Science (2022) 68:255-262

受賞者

  • 農業・食品産業技術総合研究機構西日本農業研究センター 周年放牧研究領域
  • 周年放牧グループ 柿原 秀俊
  • 東北大学大学院農学研究科
  • 教授 小倉 振一郎
  • Hidetoshi Kakihara・Shin-ichiro Ogura

研究の概要

オーチャードグラス(Dactylis glomerata、以下OG)は温帯地域での主要な牧草種ですが、多年生であるにもかかわらず永続性の低い ことが問題視されています。この一因として日本では土壌酸性があげられますが、酸性土壌でのOGの永続性改善に及ぼす肥料の影響はほとんど検討されていませんでした。そこで、まず永続の前提となる短期間の生長に及ぼす土壌酸性と施肥の影響を確認するため、土壌酸性の異なるポット栽培下のOGに4種類の肥料を施す実験を行いました。

その結果、土壌が酸性化したポットでは茎葉の生長量が増加し、この傾向は化学肥料施用下で大きく、逆に放牧牛糞施用下では小さいことを明らかにしました。この結果は、酸性土壌におけるOGの生長が非酸性土壌とは異なる施肥反応性をもつことを示しており、酸性土壌下での施肥管理によるOGの永続性改善に応用できる可能性があります。

また、酸性化したポットでは土壌中の無機態窒素濃度が高まっており、この傾向は化学肥料や牛糞堆肥施用下では強く、放牧牛糞施用下や無施肥では弱いこともわかりました。このことから、土壌酸性化によって誘導される土壌中無機態窒素濃度の上昇が、OGの生長 を促す直接的な要因の一つであると考えられました。

今後は、酸性土壌下での土壌中無機態窒素濃度の上昇による生長促進が、OGの永続性にどのように影響するか検証を進める予定です。

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