研究活動報告

日本雑草学会賞奨励賞を受賞しました。

情報公開日:2023年4月17日 (月曜日)

受賞年月日

  • 2023(令和5年)年3月25日

業績

  • 温暖地の大豆作における帰化アサガオ類の総合的防除技術に関する研究

受賞者

  • 農業・食品産業技術総合研究機構西日本農業研究センター 中山間営農研究領域
  • 地域営農グループ 浅見 秀則
  • (兼 植物防疫研究部門 雑草防除研究領域 雑草防除グループ)

研究の概要

大豆作において雑草害は多収阻害要因の一つであり、特につる性の帰化アサガオ類は大豆に絡みつき、機械収穫を困難にすることもあるため、圃場にまん延してしまうと収穫皆無に陥ることもある難防除雑草です。しかし、国内の大豆作においては有効な防除手段が少なく、また帰化アサガオ類の生態に関する知見も不足していることから、雑草の生態的特性の解明に基づく雑草防除技術の開発が求められています。

帰化アサガオ類は出芽期間が非常に長く、大豆栽培期間中には複数回にわたって防除をする必要がありますが、生産者にとっては除草労力が大きな負担になります。そこで、種子の発芽時期がばらつく要因を解明するため、前年秋に生産されたマルバアメリカアサガオ(帰化アサガオ類の一種)の種子の親株上での後熟乾燥期間の違いが翌年の発生パターンに及ぼす影響を調査したところ、後熟乾燥期間の長い種子ほど翌年の出芽率が高く、また出芽時期が遅くなることが明らかになりました。また、地中に埋設した種子は後熟乾燥期間が長いほど翌年の生存率が高くなりました。これらの結果から、翌年以降の出芽数や埋土種子量を減らすためには、雑草をできるだけ早く刈り取り、圃場外に持ち出すことが重要であることが分かりました。

また、大豆栽培期間中の帰化アサガオ類に対する有効な耕種的防除手段を検討したところ、不耕起栽培にすることで慣行の耕起栽培と比較してマルバアメリカアサガオの出芽数が抑制され、秋季の残草量も減少することが明らかになりました。加えて、新規の茎葉処理剤であるフルチアセットメチル乳剤およびイマザモックスアンモニウム塩液剤とベンタゾン液剤を組み合わせて最適な時期に処理することで、帰化アサガオ類の残草量を従来と比較して大幅に抑制することができました。以上より、耕種的防除手段(不耕起栽培)と化学的防除手段(新規茎葉処理剤の適期体系処理)を組み合わせることで、まん延圃場においても帰化アサガオ類の残草量が大豆の収量に影響しない程度まで減少し、機械収穫が可能なレベルまで抑草することができました。

さらに、帰化アサガオ類(マルバルコウおよびマメアサガオ)が蔓延する集落営農法人の多筆分散圃場において、ダイズの葉齢進展モデルを活用した適期防除支援システムを開発し、除草剤の適期散布を実施することで、帰化アサガオ類の発生面積割合が統計上有意に低下することを集落営農スケールで実証しました。ダイズの葉齢進展の高精度予測手法は帰化アサガオ類の適期防除を実現する上で重要な技術であり、ダイズの生育予測を基にした適期防除技術の除草効果を集落営農スケールで初めて実証した本成果は、今後の生産現場における帰化アサガオ類防除技術を普及・高度化する上で重要な知見になります。

式典

賞状盾