研究活動報告

Best poster award (2nd Prize) for The International Society for Ecological Modelling Global Conference 2023 (ISEM2023)を受賞しました。

情報公開日:2023年6月 6日 (火曜日)

受賞年月日

  • 2023年(令和5年)5月5日
    トロント大学(カナダ オンタリオ州トロント)

業績

  • Application of ensemble modeling for forecasting occurrences of the common cutworm, Spodoptera litura (Lepidoptera: Noctuidae)

受賞者

  • 農業・食品産業技術総合研究機構西日本農業研究センター 中山間営農研究領域
  • 地域営農グループ 川北 哲史

研究の概要

害虫の発生動態を把握することは、作物を食害する害虫の適切な管理や植物保護において、重要な技術の一つです。害虫の発生は、さまざまな環境要因によって変動することが知られていますが、一方でその発生パターンには、季節性や過去の発生量との自己相関があります。したがって、害虫の発生動態をモデル化する際には、これらの要因を考慮することが重要です。また、小型蛾類などの飛来性害虫は気温だけでなく、飛来に影響すると考えられる降水や風速などの要因にも発生数が左右されると考えられます。

そこで、ダイズや野菜等を食害する代表的小型蛾類であるハスモンヨトウ(Spodoptera litura (Lepidoptera: Noctuidae))を対象に、時系列的に変動する発生量に対して、自己相関を考慮可能でかつ、複数の気象要因を説明変数として組み込んだARIMAX(AutoRegressive Integrated Moving Average with eXogenous variables)モデルを導入し、どのような気象要因がハスモンヨトウの発生量に関係しているのかを調べました。また、そのほかに機械学習の手法を用いた発生予測を試み、複数のモデルの結果を統合したアンサンブルモデルを構築することで、単一の予測手法を使った場合と比べて予測性能を向上させることができるか検証しました。

広島県で収集されたハスモンヨトウのフェロモントラップデータを用いて、解析したところ、過去の気温や降水量等の気象データからその後のハスモンヨトウの発生量の増減やトレンドに関するいくつかの傾向を予測することができました。提案したアンサンブルモデルは、各モデルを単独で使用した場合の結果と比較して、最も精度が良いことが明らかになりました。特に、ハスモンヨトウの場合、卵や幼虫期の温度と将来の発生数の間には正の関係があり、温度が高い条件ほど、次に成虫となるハスモンヨトウの発生数が増加することが示されました。これらの結果や本研究で用いた手法は、害虫の発生動態を理解し、将来の害虫管理に関する施策を立てる際に役立てることができます。

<参考文献>
Kawakita, S., & Takahashi, H. (2022). Time-series analysis of population dynamics of the common cutworm, Spodoptera litura (Lepidoptera: Noctuidae), using an ARIMAX model. Pest Management Science, 78(6), 2423-2433.

賞状