研究活動報告

日本農業工学会賞・新農林社賞を受賞しました。

情報公開日:2024年5月15日 (水曜日)

受賞年月日

  • 2024年(令和6年)5月12日

業績

  • 局地気象の実態解明に関する農業気象学的研究

受賞者

  • 農業・食品産業技術総合研究機構西日本農業研究センター 研究推進部
    黒瀬 義孝

研究の概要

地形条件の複雑な地域では、ちょっとした場所の違いによって作物の収量や品質に違いが現れます。この要因の1つとして、局地気象の関与が挙げられます。局地気象とは比較的狭い範囲に形成される地域固有の気象であり、多くの場合、地形の影響を強く受けて形成されます。局地気象の特徴として現象の再現性が挙げられ、この再現性により局地気象を農業に活用したり、逆に農業被害の常習地帯が作られたりします。局地気象には、局地風、斜面温暖帯、冷気流、盆地霧、オアシス効果など、さまざまな気象現象があり、そこで営まれる農業に影響を及ぼしています。

局地気象を農業に活用するため、局地気象の実態解明に関する研究を行いました。この過程で、独創的な観測および解析手法を開発しました。すなわち、1) GPSと超音波風向風速計を自動車に搭載し、移動経路上の風向風速を1秒ごとに求める風の移動観測法、2) 国土数値情報によって地形を再現し、周辺地形による日射の遮蔽を考慮した日射環境の推定法、3) サーモグラフィー装置を用いた斜面温暖帯や冷気湖の観測などです。これらの手法を用いることで、斜面温暖帯が持つ温度資源、斜面日射量と集落や農耕地の分布との関係など多くの知見を得ることができました。特に阿蘇外輪山の切れ目に吹く局地風「まつぼり風」の研究では、気象の教科書や事典で定義されている冷気流としての「まつぼり風」以外に、山越え気流としての「まつぼり風」の存在を明らかにし、「まつぼり風」の定義を塗り替えることができました。

日本農業工学会 学会賞 賞状

新農林社賞

日本農業工学会 学会賞 盾