研究活動報告

日本草地学会賞(斎藤賞)を受賞しました。

情報公開日:2024年10月29日 (火曜日)

受賞年月日

  • 2024年(令和6年)9月27日

業績

  • 効率的草地管理に向けたICT機器等を用いた放牧牛と草地のセンシング技術の開発

受賞者

  • 農業・食品産業技術総合研究機構西日本農業研究センター 周年放牧研究領域
    渡辺 也恭

研究の概要

1990年代後半から携帯電話やGPSなどの急速な普及は、日常生活や仕事環境を劇的に変化させ、以降もスマートフォンやドローン等の情報通信技術(ICT)は著しく発展しています。一方、放牧飼養技術は、古くからある技術であり、牛の精密管理には向かず、放牧地の管理も熟練を要するとされてきました。そこで、急速に発展してきたICT技術や機器を活用して、放牧牛や草地管理の効率化や精密化に関する技術開発に取り組みました。長年に亘るこれらの活動が評価され、この度の受賞となりました。

牛の行動は牛の生理的欲求や物理的な状況を知る指標ともなり得るもので、特に人の目が届きにくい放牧地での牛の行動を知ることは、牛自身の健康管理や放牧地の管理に役立ちます。2000年代初頭に、3次元の立体的な動きや重力加速度の方向を検出することのできる3軸小型加速度計が市販化され、この加速度計を放牧牛に装着して、その行動を分類する研究を行いました。放牧牛の下あごに装着した加速度計のデータを加工し解析することにより、採食、反芻および休息行動について、高い精度で分類することに成功しました。また、牛の尻尾に装着した加速度データの解析により、排ふん行動時間の検出も可能になりました。さらに、人の健康管理用途に市販された加速度計測に基づく小型の活動量計を用いた放牧牛の採食時間推定法を発展させ、また、携帯用GPSロガーとモバイルバッテリを組み合わせた安価なGPS首輪の開発を行いました。

これら簡易GPS首輪と活動量計を組み合わせて、放牧牛の行動を看視する手法を確立し、日本各地の放牧地でデータを取得し、放牧牛の行動実態に関する多くの知見を得て、その行動情報を取り入れた放牧地の評価や診断を実施しました。