4-HPPD阻害型除草剤感受性を判別する分子マーカー
要約
DNAマーカーHIS28DELを用いることで、新規需要米向け水稲品種「モミロマン」「ハバタキ」などに由来する4-HPPD阻害型除草剤感受性の選抜が可能となり、抵抗性と感受性を容易に判別することができる。
- キーワード:イネ、飼料用稲、多収品種、4-HPPD阻害型除草剤、DNAマーカー
- 担当:中央農業研究センター・作物開発領域・稲育種グループ
- 代表連絡先:電話 025-523-4131
- 分類:普及成果情報
背景・ねらい
SU耐性雑草の対策として4-HPPD阻害型除草剤の開発・普及が進んでおり、除草剤製品の3割以上を占めるに至っている。しかし、飼料用稲品種などの新規需要米向け多収水稲品種のなかには、4-HPPD阻害型除草剤に対して白化・枯死などの感受性を示す品種が報告されている。これらの感受性品種については4-HPPD阻害型除草剤を使用しないように周知を行っているが、現在でも薬害の報告は続いている。品種育成の現場においても除草剤感受性の選抜は進んでおらず、「とよめき」や「オオナリ」など新たな感受性品種が登録されている。そのため、育種現場で利用可能な除草剤感受性に関する選抜マーカーを開発する。
成果の内容・特徴
- 2010年にイネ品種・系統の4-HPPD阻害型除草剤に対する感受性を決定する遺伝子として単離同定されたHIS1について、主要な感受性品種の塩基配列を抵抗性品種と比較したところ、感受性品種のHIS1は4つの変異型に分類できる(図1)。
- 「モミロマン」などの主要な感受性品種は第4エキソンに28bpの欠失があり、この領域を増幅するDNAマーカーHIS28DELを設計した。HIS28DELは、抵抗性品種から280bp、感受性品種から252bpの断片を増幅する共優性マーカーであり、2%アガロースゲル電気泳動で両者の識別が可能となる(図2)。
- 28bp欠失型以外のいずれの変異型についても1塩基置換を利用した優性マーカーを設計し、判別を可能とした。例えばIR8型の判別マーカーHIS-IR8を用いた場合は、感受性品種にのみ約500bpの断片が増幅される(図3)。
普及のための参考情報
- 普及対象:全国の水稲育成機関
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:新規需要米向け水稲品種の育種に取り組むすべての公設試験研究機関、国研、民間への普及を見込む。
- その他:本マーカー配列および本マーカーを用いた対立遺伝子の判別および品種育成選抜法については特許登録済であり、利用には許諾が必要である。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2009~2016年度
- 研究担当者:前田英郎、村田和優(富山県農技セ)、川田元滋、大島正弘、吉田均、廣瀬咲子、川岸万紀子、谷口洋二郎、山田祐司(SDSバイオテック)、関野景介(SDSバイオテック)、山崎明彦(SDSバイオテック)、安東郁男、加藤浩
- 発表論文等:
1) 川田ら「4-HPPD阻害剤に対する感受性を判定する方法」特開2014-011967(2014年1月13日)
2) 加藤ら「4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性が高められた植物」特開2012-550943(2012年7月5日)