リンゴのみつ風味を再現するエチルエステルフレーバー

要約

みつ入りリンゴの香気成分中のエチルエステル類の組成をもとに調合したフレーバーを添加すると、リンゴ加工品のみつ風味と嗜好性が高まる。

  • キーワード: リンゴ、みつ風味、嗜好性、エチルエステル類、フレーバー
  • 担当: 中央農業研究センター・土壌肥料研究領域・作物栄養グループ
  • 代表連絡先: 電話 029-838-8481
  • 分類: 普及成果情報

背景・ねらい

リンゴ(Malus domestica Borkh.)のみつ入り果は「甘くておいしい」との評判が高いが、糖度では説明できないケースが多く、好まれる理由は謎とされていた。しかし、みつ部分の低酸素条件によって生成するエチルエステル類が嗜好性の高さの決め手となる可能性を2015年度に示した。そこで、「ふじ」みつ入り果の香気成分組成をもとにエチルエステル類からなるフレーバーを調合し、リンゴの嗜好性を高める効果があるか明らかにする。また、リンゴ加工品及びリンゴ風味食品の嗜好性を高めるフレーバーの開発に繋がる情報を収集する。

成果の内容・特徴

  • リンゴみつ入り果には、みつ部分の嫌気代謝によってエチルエステル類が多量に生成することを2015年度に報告している。「ふじ」みつ入り果の香気成分中のエチルエステル類の組成を解析すると、酪酸エチルが最も多く含まれており、2-メチル酪酸、プロピオン酸、ヘキサン酸のエステルがこれに続く。この情報をもとに調合したエチルエステルフレーバーの組成を表1に示す。
  • 「ふじ」みつ無し果から調製した混濁果汁に表1の調合したフレーバーを0.1%添加するとみつ風味が高まり、そのみつ風味は「ふじ」みつ入り果の混濁果汁と同等となる。エチルエステル類はリンゴのみつ風味の決め手となる成分である。
  • みつ入り果から調製した混濁果汁では褐変が生じやすく外観の悪化を招く。エチルエステルフレーバーの使用によって、外観が悪化することなくみつ風味と嗜好性の強化が可能となる(図1)。
  • フレーバーとして市販アップルフレーバーを用いたキャンディと、そのアップルフレーバーにエチルエステルフレーバーを添加したキャンディ(フレーバー添加区)を比較する官能評価を行うと、エチルエステルフレーバー添加キャンディのみつ風味及び嗜好性の評価は高まる(図2)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:リンゴ加工業者、香料メーカー、食品加工業者
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国
  • その他:
    1)リンゴみつ入り果へのエチルエステル類の集積については2015年度研究成果情報を参照する(「みつ入りリンゴの嗜好性はエチルエステル類の集積により高くなる」)。
    2)リンゴ生果のピューレ、市販アップルフレーバーを配合した清涼飲料でも混濁果汁及びキャンディと同様のみつ風味及び嗜好性の上昇効果が認められる。フレーバーとして使用する際には、対象食品の香気組成及び特徴に合わせて組成の再調整が望ましい。

具体的データ

図1 味噌の連続通電加熱用リング状電極,図2 味噌の温度履歴,図3 味噌中の枯草菌芽胞の失活, 図4 味噌の酸性フォスファターゼの失活

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間: 2014~2015年度
  • 研究担当者:田中福代、岡崎圭毅、庄司靖隆(小川香料(株))、宮澤利男(小川香料(株))
  • 発表論文等:
    1)田中ら (2016) 日食科工誌、63(3):101-116
    2)田中ら (2017) 日食科工誌、64(1):34-37
    3)田中ら「リンゴの蜜様香気を表現する香料組成物および香気付与方法」特開2016- 154488 (2016年9月1日)、実施許諾契約締結済み