イネ縞葉枯病多発地域における発病株率および保毒虫率の推移
要約
イネ縞葉枯病多発地域では、収穫後のひこばえにおいて発病株率およびヒメトビウンカの保毒虫率が急激に上昇する。イネ収穫後は必ず水田を耕起して、保毒虫率の高い個体群の越冬を防ぐ。
- キーワード:イネ縞葉枯病、ヒメトビウンカ、保毒虫率検定、イネ、ひこばえ
- 担当:中央農業研究センター・虫・鳥獣害研究領域・虫害防除体系グループ
- 代表連絡先:電話 029-838-8481
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
関東、近畿、九州地方においてイネ縞葉枯病の発生が増加しており、早急な対策技術の開発や正確な発生予察情報の提供が求められている。そこで、多発地域におけるイネ縞葉枯ウイルスとその媒介虫であるヒメトビウンカの動態を解析し、本病の伝染環を効果的に遮断するための圃場管理や発生予察の高度化に役立てる。
成果の内容・特徴
- イネ収穫後のひこばえにおいてイネ縞葉枯病発病株率が急激に上昇する。それにともない媒介虫の保毒虫率も急激に上昇する(図1)。
- ひこばえからウイルスを獲得した媒介虫の多くはそのまま水田内に留まるため、冬になるとひこばえの枯死にともないほぼ死滅するが、水田内にスズメノカタビラなどのイネ科雑草が繁茂していると死滅せずに雑草で越冬する。イネ収穫後は必ず水田を耕起して、保毒虫率の高い個体群の越冬を防ぐ。
- ひこばえからウイルスを獲得した媒介虫の一部は、水田付近のスズメノカタビラなどのイネ科雑草に移動して越冬する。畦畔など水田に近接した場所には保毒虫率の高い個体群が存在する(図2)ので、イネ縞葉枯病が発生しやすい地域では秋から冬にかけて除草作業を実施するとよい。
成果の活用面・留意点
- 本成果はイネ縞葉枯病の防除指導や発生予察を行う病害虫防除所や普及センター等で活用できる。
- イネ縞葉枯病の発生予察を目的としてヒメトビウンカの保毒虫検定を行う場合は、ヒメトビウンカをひこばえから採集すると越冬個体群の保毒虫率を過大評価するおそれがあるため、ひこばえからの採集は行わず、雑草地等から採集する。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金、委託プロ(温暖化適応・異常気象対応)、競争的資金(農食事業)
- 研究期間:2011~2016年度
- 研究担当者:柴卓也、平江雅宏、早野由里子、上松寛、笹谷孝英、樋口博也、大藤泰雄、奥田充
- 発表論文等:Shiba T. et al. (2016) J. Econ. Entomol. 109(3):1041-1046