堆肥ペレットの分解に伴う微細形態変化と粗孔隙の形成
要約
牛ふん堆肥ペレットは土壌中で外側から分解が進み体積が減少して、それに見合う量と形態の孔隙が周囲の土壌との間に形成される。ペレット内部の微細形態の経時変化は明瞭でなく、孔隙の少ない微細構造が施用18月後まで維持される。
- キーワード:堆肥ペレット、微細形態、分解、薄片、埋設試験
- 担当:中央農業研究センター・土壌肥料研究領域・土壌診断グループ
- 代表連絡先:電話 029-838-8481
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
堆肥を圧縮成型した堆肥ペレット(以下ではペレット)はハンドリングや保存性が非成型の堆肥より優れており、農業現場への普及が進んでいる。ペレットは養分供給能などが非成型の堆肥と異なり、その差は内部の微細構造など形態的特性に起因すると考えられるが、ペレットの微細形態やその経時変化に関する知見は少ない。そこで牛ふん堆肥のペレットと土壌(低地土、黄色土、黒ボク土の3種)を塩化ビニール管に封入し1~18月間にわたり圃場に埋設(図1)し、樹脂固化法による薄片化(久保寺ら、2009)でプレパラートを作成して微細形態の経時変化を調査する。
成果の内容・特徴
- ペレットは分解に伴い体積が減少し、周囲に孔隙が形成される(図2)。この孔隙の外縁部(孔隙と土壌の境界)と内縁部(ペレットと孔隙の境界)は同じ形である(図2の拡大部分)。黄色土では輪切りの方向に粗孔隙が生じてペレットを離断するが、低地土と黒ボク土ではこれは見られない。
- 画像中の面積から算出したペレットの体積残存率(周囲の孔隙の外縁部を、施用当初のペレットの外形と見なす)と、ガラス繊維ろ紙法で測定した重量残存率は良く整合し(図3)、ペレットの周囲に形成される孔隙の量はペレットの分解量と対応している。
- ペレット内部の微細形態は視野ごとの差が大きいが、全般に固相割合が大きく孔隙の少ない構造が主体で、経時変化や土壌種による差は明瞭ではない(図4)。
- 以上のように施用後のペレットの主要な形態変化は、分解に伴い外縁部が失われ、施用時の形と相似形を保ったまま体積が減少し、周囲に孔隙が形成されることである。これは非成型の堆肥では見られない現象で、黒ボク土にこのペレットを10 t/ha施用して18月後に生成する孔隙の量は作土1000 cm3あたり5.8 cm3である(体積残存率38.9 %、ペレットの仮比重0.7、耕起深15 cmとして計算)。一方ペレット内部の微細形態は経時変化が少なく、施用初期の孔隙が少ない構造が18月後まで保たれる。
成果の活用面・留意点
- ペレット施用が通気性や透水性など土壌物理性に及ぼす影響の評価や、ペレット内部の微生物活動の解析を行うための基礎データとして活用できる。
- ペレット周囲に形成された孔隙の機能や、黄色土のみでペレットの離断が生じた原因については今後の検討が必要である。
- 乳牛を主体とした牛ふん堆肥(全炭素353 g/kg、全窒素 20 g/kg、C/N =17.3)を原料に、ディスクペレッター装置で作成したペレットで得られた結果である。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金、委託プロ(温暖化適応・異常気象対応)
- 研究期間:2008~2012年度
- 研究担当者:久保寺秀夫、山根剛、脇山恭行、荒川祐介
- 発表論文等:
1)久保寺ら(2009)土肥誌、80(5):522-525
2)Kubotera H. et al. (2016) J. Jpn. Soc. Soil Phys. 134:5-13