アラビノースおよびキシロース濃度はカボチャ貯蔵性を反映する指標である
要約
カボチャ成分は貯蔵性の違いを反映する。貯蔵性の高い品種ではアラビノース、キシロースの濃度が初期において低濃度で推移することを利用し、貯蔵開始時の濃度から貯蔵性の評価が可能である。
- キーワード:カボチャ、貯蔵性、肉質劣化、GC/MS、メタボロミクス
- 担当:中央農業研究センター・土壌肥料研究領域・作物栄養グループ
- 代表連絡先:電話 029-838-8481
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
カボチャでは12月から5月の間、国内産が確保できない端境期が存在する。国内産供給量を拡大するためには、貯蔵性の向上が重要である。これまでに、貯蔵性の高い品種や施肥法が見いだされているが、貯蔵性の差異を決めるメカニズム等は十分に明らかになっていない。本成果は、GC/MSメタボロミクスを適用し、貯蔵中のカボチャに含まれる水溶性成分を広く分析し、貯蔵性評価指標と果肉の水溶性成分の相関を解析することにより、カボチャ貯蔵性の指標となる成分を特定する。
成果の内容・特徴
- 収穫後1ヶ月(貯蔵開始時期)における水溶性低分子成分の濃度に主成分分析を行い、主成分スコアとローディング値をプロットすると、カボチャ品種の成分組成の分布と、それに対応する各成分の寄与が可視化できる。「Gold Nugget」、「打木甘皮栗」などのグループ(低貯蔵性)と「白爵」、「雪化粧」のグループ(高貯蔵性)は主成分スコアが異なる傾向が認められ、アミノ酸、糖など多くの成分が寄与する。貯蔵性が高い品種ではこれらの成分の濃度が低くなる(図1)。
- 肉質劣化の程度に相当する貯蔵性ランクを指標として、水溶性低分子成分の濃度を用いたPLS回帰分析を行うことにより、貯蔵性ランクと特に関連が強い成分を特定することができる。関連の強い成分としてキシロース、アラビノースなどの糖類が上位に挙がり、貯蔵性ランクとの順位相関係数も高い(表1)。
- 貯蔵性が高い「白爵」、「雪化粧」では、「えびす」、「みやこ」、「Gold Nugget」、「打木甘皮栗」と比較して、アラビノースおよびキシロース濃度が収穫後3ヶ月以上安定して低い値を示し、貯蔵初期の段階で指標として利用できる(図2)。
成果の活用面・留意点
- アラビノース、キシロースはアッセイキット等を用いて簡易に測定することが可能であり、品種育成や貯蔵性を高める栽培法開発等の場面で利用可能である。両成分は細胞壁の構成成分であり、カボチャ貯蔵性の差異には細胞壁成分の分解性の難易が寄与している可能性がある。
- 評価に用いたカボチャ15品種は北海道恵庭市(公財)道央農業振興公社において2011年に栽培されたものである。各品種の栽培日程等は統一した条件で行った。貯蔵性ランクは品種育成で用いられている方法に準じて、貯蔵期間中の乾物率の推移をもとにランク付けした。
具体的データ

その他
- 予算区分:競争的資金(農食事業)
- 研究期間:2011~2013年度
- 研究担当者:岡崎圭毅、木村祐太(佐賀大農)、杉山慶太、嘉見大助、中村卓司、岡紀邦、田中福代、大脇良成
- 発表論文等:Okazaki K. et al. (2016) Food Chemistry 196:1150-1155